光センサー選果場持ち込み伸びず

光センサー選果場利用のメリットが実感できる仕組みづくりが急務となっている

有利販売できる仕組みを
利用のメリットの明確化必要

豊作なのに赤字になってしまう産地――。これが奄美大島の果樹農業の実態ではないだろうか。果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエ緊急防除解除で2年ぶりの島外出荷にこぎつけた果樹のエース・タンカンは今年(2016年度産)、記録的な豊作となった。

地元市場・名瀬中央青果㈱の取扱量が示している。入荷総量は437㌧に達し、初の400㌧超となった。ところが市場価格は低迷。生産者からの出荷の集中で供給量に需要が追いつかず値崩れ、キロ当たり価格の平均が30円(底値)まで暴落することもあった。終盤に入り持ち直したものの、「作るだけ赤字」(生産者)、「赤字覚悟の値段をつけなければ売れない」(小売店)という悲痛の声が漏れた。

農協共販も同様だ。JAあまみ大島事業本部まとめのタンカン取扱実績をみてみよう。数量は192㌧(計画比100%)で、計画通りの量を確保したが豊作となっただけに当然だろう。むしろ中央青果の取扱量と比較(半分以下)すると、もっと上乗せできなかったのだろうか。キロあたり平均単価は計画の419円に対し281円(計画比33%減)となり、こちらも価格は低迷した。

販売についてJAは「当初の予想より宅配の注文が少なく、また業者等の伸び悩み、経済連などに予定よりも多く発送した」と説明している。豊作により島外市場など販路が確保できなかったということだが、量があふれても品質の良さをアピールすれば価格面で有利な販売は実現しないのだろうか。独自の販売ルートを持つ農家のなかには値段が高めの商品でも島外から安定した注文が届き、例年通りの価格で収益をあげたところもある。

奄美大島には有利販売のための手段がある。光センサー付き選果場だ。光センサーを通すことで果実1玉ごとに糖度やクエン酸などの内部品質が瞬時に分析され、果皮の傷などの測定機能も備わる。光センサー選果の利用は購入者に対する「品質保証」に役立つのに、利用は伸びていない。

奄美市名瀬朝戸に奄振事業で整備された奄美大島選果場はタンカンの場合、460㌧(一日約20㌧)処理できる。「生産者への出荷見込み調査に基づいた数字」(事業主体だった奄美市)なのに、13年2月の供用開始以降、一度も達成されていない。選果量は毎年下がる傾向にある。選果場を管理運営するのはJAだ。16年度産の選果場持ち込み数量の合計は289㌧となった。処理可能量の6割強だ。選果場持ち込みのうちJA取扱の共販以外では委託がある。個販(生産者による個人販売)だが選果場を利用するもの。この委託の量は97㌧にとどまった。

選果場持ち込みの想定量は共販が250㌧で、今回の実績(192㌧)は想定に対し8割弱。残りをカバーするのが委託だが、想定の半分にも届いていない。なぜ委託が増えないのだろう。

光センサー利用料(キロ当たり)は共販で23円以内、個販で15円以内とされている。この利用料を負担しても高値で取引されたら選果場への持ち込みは増えるはずだ。「センサーを利用しても価格への反映という形でメリットを感じられないから利用が増えないのではないか。高値取引に至らないなら利用者は、利用料を払うだけ損だと感じてしまう。結果的に選果場離れが起きる。委託でもセンサー利用のメリットが実感できる仕組みを産地として考えるべきではないか」。奄美市住用町の果樹専業農家・元井孝信さんは提案する。

一部の青果店のなかにはタンカンの島外出荷にあたり「光センサーを通しているか」を確認し、「光センサータンカン」の場合は値段を上乗せして対応している。こうした販売方法を取扱量が圧倒的に多い地元市場でもとれないだろうか。

元井さんは「光センサー利用を証明するシール等を準備した上で、地元市場には袋詰めでタンカンが持ち込まれていることから、こうした袋にも証明シールを添付できるようにすべきだ。それによって競り落とす仲買人も品質保証されたタンカンであることが認識できる。品質保証されたものと、保証されていないものを明確に区別すべき」と指摘する。この品質保証について元井さんは「島外に出荷するタンカンは全て品質保証されたものに限定した方がいい。それによって奄美産は信頼され、ブランド化が実現する」と語る。

差別化により品質保証が価格に反映されたら選果場への持ち込み(委託)も増加するだろう。光センサー選果場への持ち込みで有利販売できる仕組みを確立したい。生産農家の努力が報われる形で高品質のものが適正に評価されない限り、「奄美たんかん」の未来はない。
(徳島一蔵)