越川監督、満島さんインタビュー

越川監督と満島さんの舞台あいさつなどが行われた

「海辺の生と死」上映会

 

「世界で一番好きな島で撮影」

 

「島尾の著作に触れる機会にも」

 

 島尾敏雄生誕100年記念祭の映画「海辺の生と死」特別上映会が7日、奄美市名瀬長浜町の奄美文化センターで行われた。舞台あいさつに越川道夫監督と主演の満島ひかりさんが登壇。ロケ地での先行上映会で、奄美での映画撮影や作品に寄せる思いなどを聞いた。

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 越川監督は多数の映画制作に携わり、今回の作品が長篇映画として自身2作目の監督作品。若い頃から島尾敏雄やミホの作品を読み続けていて、「海辺の生と死」の映画化を構想して満島さんが奄美にルーツがあると知り、映画に誘ったこともあったと語った。

 生誕100年の記念の年に映画公開となることを喜び、「映画だけでなく、島尾の著作に触れる機会になってくれれば良い」「この時代や情勢の中で、作品を読むことは重要な意義がある」とした。

 映画撮影について、撮影する過程の中で島のことを学んでいったとし、現地撮影なので島を裏切ることはできないと心配したという。映画の中で、「満島さんが演じるトエが歌う場面で、リュウキュウコノハズクが合わせたように鳴き出して唱和したと感じた」と話した。

 主演の満島さんは、自身が20代最後の年に身の丈にあった作品を探していて監督から誘いを受けたという。また「奄美が世界で一番好きな島で、そこで演じることは怖かった」とし、覚悟を決めて撮影したというエピソードを紹介した。

 撮影で苦労した点は、スタッフに奄美のことを理解してもらうことや方言の話し方だと指摘。逆に楽しかったのは、島の子どもたちと撮影したわらべ歌を歌うシーンや遊ぶシーンを挙げた。

 島の子どもの感性にも触れて、「自分が泣く演技の時に、共感して泣き出す子もいた」と振り返った。満島さんは「役を演じながらミホさんと奄美大島の役の二役をやっていると感じていた」と話した。

 越川監督に対しては、「戦争ではなく愛の味方でいてね」や「奄美の海の色は群青色」などと毎日のようにつぶやいていたと話した。

 奄美については、「アメリカなどと違い、ヨーロッパに近いイメージがある」として、撮影中は「こちらが望まなくても、息を吸うように当たり前のように自然が身近にあり毎日のように奇跡を感じていた」と感想を述べた。