鹿大島嶼研・研究会

奄美会場からの質問に回答する鵜川准教授

「現存の維持が最良」
オキナワウラジロガシ林「再生には膨大な時間」
奄美分室でもネット受講

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは10日、鹿児島市の同大同センター会議室などで第180回研究会を行った。奄美会場の同センター奄美分室でも、インターネットの無料通話サービスを利用して参加者が研究会を受講した。

 講師を、同大農学部の鵜川信准教授が担当。演題「オキナワウラジロガシ林の維持機構」で、奄美諸島における両優占種個体群の維持機構やその位置づけなどを講演した。

 講師は徳之島の三京岳林木遺伝資源保存林を、調査区に設定。オキナワウラジロガシとスダジイの天然林の維持機構などを調査している。

 奄美諸島や沖縄の森林について、まとまり度の指標で位置付け。「奄美大島はまとまり度60%以上が95%あるので、森林は連続してまとまりがあるのが特徴」とした。

 一方、徳之島はまとまり度が低く、あまり森林は連続しないと指摘。鵜川准教授は「こうした森林の連続性を確保していくことが、生物の保全につながる」との見解を示した。

 12年間の調査データで、調査区内のスダジイは尾根に分布しオキナワウラジロガシは斜面や谷に分布すると報告。個体群動態を分析して、「オキナワウラジロガシの個体群は、大径木によって支えられている」とした。

 一方、スダジイは安定した生育段階へ成長した個体によって支えられていると示唆。オキナワウラジロガシ林の維持機構について、▽斜面や谷に分布する▽萌芽を形成しない▽長寿命によって個体群が維持される―と解説した。

 その保全について、「伐採した場合に再び大径木が形成されるまでに長い年月がかかることや、母樹の消失から種子が供給されなくなることを要因に、再生には膨大な時間がかかる」とまとめ、「現存のオキナワウラジロガシ林を維持することが最良」と語った。

 講演終了後に、鹿児島会場と奄美会場から質疑応答を実施。インターネットを利用してテレビ電話のように講師から回答があり、奄美からも活発な質問が出された。