大島 4強ならず

【準々決勝・大島―樟南】9回裏大島二死、代打・本田が内野安打でチーム初安打=県立鴨池

樟南に1安打完封負け

 

 【鹿児島】第99回全国高校野球選手権鹿児島大会第13日は15日、鹿児島市の県立鴨池球場で準々決勝2試合があった。

 奄美勢は第5シード大島が第4シード樟南と対戦。樟南の左腕エース松本晴に九回二死まで無安打に封じられ、0―4の1安打完封負けだった。第1シード神村学園は川内商工に7―0で七回コールド勝ちして4強に勝ち進んだ。

 第14日は16日、同球場で準々決勝残り2試合があり、ベスト4が出そろう。

 【評】大島は先発の左腕エース中村を中心に粘り強く守った。毎回走者を出したが、三回の犠飛とエラー、六回の内野ゴロ、七回の犠飛の計4失点で切り抜けていた。投手陣を打線が援護したかったが、樟南のエース松本の前に完璧に封じられた。四球で3度出塁したが、盗塁失敗、けん制アウト、併殺で生かせず八回まで3人ずつで打ち取られた。九回二死まで無安打だったが、代打・本田が内野安打で意地の1本を放った。

打つ手なく完敗

170715大島円陣
【準々決勝・大島―樟南】9回表、攻撃の前に円陣を組んで気合を入れる大島ナイン=県立鴨池

 

「悔しさしか感じない」 大島

 

 九回表二死、ノーヒットノーランで終わってしまいそうな重苦しい雰囲気があった。だが代打・本田が2ストライク追い込まれながら、しぶとく内野安打を放つ。当たりは良くなかったが「3年生の意地」(塗木哲哉監督)が詰まった1本だった。

 「仲間が自分にチャンスを回してくれた」ことに1番・濱田雄一郎主将は心意気を感じた。何とか「後ろにつなぐ」気持ちで積極的に振っていったが、ファール2つで簡単に追い込まれ、最後はボール球を空振り三振。24年ぶりとなる夏の準々決勝は「悔しさしか感じない」(濱田主将)無念の敗戦だった。

 樟南の2年生左腕・松本晴を最後まで攻略できなかった。右打者の内角直球が投球の基本線であり、これを狙って打ちに行ったが、あまりに厳しいコースに決まるため手が出なかった。「直球に手が出ず、変化球を空振りしてしまう悪循環に陥った」(濱田主将)。塗木監督も「見入ってしまって、どう攻略するかのヒントも与えられなかった」と脱帽する。

 守備面では、ここまで全試合をコールド勝ちしてきた樟南に10安打され失点に絡む失策もあったが、適時打は1本も打たれず4失点でしのいでいた。それだけに「投手陣を打線が援護できなかった」ことを濱田主将は悔やむ。

 ここ数年、秋、春、NHK旗で4強入りしても夏は8強の手前で涙をのみ続けていた。それを克服して24年ぶりとなる8強入りだが「ベスト8には意味がない」と濱田主将は言い切る。目指していたのはそこでなく本気で甲子園に行く気持ちで戦い続けたからだ。夏8強は「大高野球部の歴史の1歩前進」(塗木監督)だったことは間違いない。「力を出し切れたかどうかわからないけど、全力プレーはやり切った」手ごたえは濱田主将もあった。
(政純一郎)

強気で全力投球

170715熱球譜・大島

大島・中村誠斗投手

 

 4強入りがかかった大事なマウンドを託された。2回戦、4回戦を「(日高)想良が頑張ってくれたので、万全の状態で臨むことができた」。

 相手は過去3戦で36得点、全試合を完封コールド勝ちした樟南だが「強気で全力投球し、最少失点で切り抜けること」を心掛けた。3回戦の鹿児島玉龍戦で先発したが「恐々投げて」初回に2本ホームランを浴びた。どっちにしても打たれるなら、思い切って強気で投げた方が気持ちも前向きでいられる。

 樟南の松本晴は、学年は1つ下だが「直球のスピード、変化球のキレ、自分よりも上」に感じたが、負けるわけにはいかない。独特のゆっくりしたモーションから相手の間合いを外す自分らしい投球を最後まで貫いた。

 六回裏、一死一三塁のピンチでマウンドに集まる。ムードメーカーの平遼介がコップとスポーツ飲料の粉末を持ってきた。

 「ゆっくり飲んで、ここを切り抜けてくれよ」

 チームメートの想いを背負い、全力で直球を投げる。ライナーの打球は二塁手・米田のグラブに収まったかに思われたが内野ゴロとなり1点を失った。9安打されながら適時打は1本も打たせなかったが「自分のボールに力がなかった。悔いの残る内容だった」。

 大島としては24年ぶりとなる夏8強だったが「大島はここで終わるようなチームじゃない」からこの成績に納得していない。「僕らが目指した世界を後輩たちがつかんで欲しい」と託していた。
(政純一郎)