クロウサギ飼育へ協議開始

クロウサギの飼育展示の可能性などについて協議した

準備検討委員委嘱 大きな枠組み提案も
大和村

 大和村は2日、同村役場会議室で第1回アマミノクロウサギの飼育等に向けての準備検討委員会を開いた。自然保護関係や関係機関などから、15人が出席。国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギの飼育展示施設の構想を持つ同村が、学識経験者や地元の獣医師などを準備検討委員に委嘱。施設の整備や飼育可能かどうかなど協議し活発な意見交換がなされた。

 同村では以前に大和中学校で、1963年から91年まで文部省の許可を得てクロウサギの飼育を実施。67年には天然記念物の繁殖事例として東京の上野動物園のカモシカに次いで2例目となる、飼育していたペアから幼獣が誕生していた。

 開会で伊集院幼村長は、大和中での飼育事例を紹介し飼育可能かどうか検討してもらい奄美に合った施設を持ちたいとあいさつ。委員8人の紹介が行われ、伊集院村長から委嘱状が手渡された。

 同村の泉有智副村長が委員長となり、クロウサギの飼育展示施設などについて協議。事務局の総務企画課の江崎さとみさんが、先進地事例で沖縄県国頭村のヤンバルクイナ生態展示施設を報告。同施設では、環境省からヤンバルクイナを借り受けて展示しているとした。

 委員の東京農工大の松田浩珍教授は、獣医分子病態治療学分野で野生生物の遺伝子解析など研究。2年前から同村で、種の保護を目的にアマミノクロウサギのゲノム分析に着手している。

 松田教授は施設の目的について、種の保存と飼育展示は分けて考えるべきと提言。施設の実現性に関して、資金面や人材面など確保されないと机上の空論になりかねないと指摘した。

 地元の奄美哺乳類研究会の阿部優子代表は、施設の趣旨に賛同。展示について「見せるための工夫が必要だろう。夜行性動物なので昼夜逆転する施設が必要かもしれない」と見解を示した。

 実際にクロウサギの傷病個体を預かっている平川動物園の落合晋作さんは、村単独より大きな枠組みでの準備を提案。他の委員からも、長期的な視野や文化財保護法の現状変更手続きをクリアするための理由付けなど助言があった。

 同村は今回の意見を踏まえて、年内に準備検討委員会を開催し施設の方針など定める予定。