迷走台風 観光面に大打撃

台風接近で遊泳禁止を掲げ、来場を禁止した「大浜海浜公園」(4日午後2時ごろ)

キャンセル相次ぐ
旅行自体中止「営業的損失小さくない」
大浜海浜公園 立ち入り禁止に

強い台風5号が4日、奄美地方北部に接近した影響で、奄美群島内の交通機関は運休や欠航となり、観光客など多くの人に影響が出た。朝から強風と高波に見舞われた奄美大島では、人気のマングローブカヌーの中止や観光スポットの海水浴場が立ち入り禁止に。荒天によりホテルに足止めとなった観光客も少なくなかった。夏の観光シーズンが本格化している中、今回の台風接近に観光業界は「出鼻をくじかれ、大きな打撃」と声を落としている。

7月21日の発生後、日本の南をしばらく迷走していた5号は、3日ごろから奄美地方に接近。奄美大島は4日未明、風速15㍍の強風域に入った。台風接近の情報や4、5日の海・空の便欠航などを受け、同島内のホテルやレンタカー事業所、ダイビングショップには観光客からのキャンセルが相次いだ。

奄美市名瀬市街地のホテルは、ダイヤ復旧までの延泊や飛び込み客の受け入れなど、終日対応に追われた。市内のホテル関係者によると、奄美の認知度の高まりやLCC関西直行便の就航で、今夏の予約数は「前年に比べ、1~2割増えた」との声が多く、8月の宿泊状況は、月遅れ盆(13~15日)前後がピークと見ている。

その一方、市内ホテルやレンタカー事業所の関係者は、日程変更して再度来島するビジネス客に比べ、夏期観光客は旅行自体を中止するため、「地域にとって営業的損失は小さくない。夏の入込が昨年より好調の兆しを見せていたが…」と今回の台風接近を残念がる。

多くのダイビング客を受け入れている龍郷町芦徳のネイティブシー奄美は、7日までダイビング予約の受付を取りやめた。チーフインストラクターの鈴木貴大さんは「波が落ち着き、海中のにごりが薄まるまで日数がかかる」と話した。

周辺海上の高波を受け、奄美市紬観光課は午前中、同市名瀬小宿の大浜海浜公園への立ち入りを禁止に。2016年度実績によると、繁忙期の8月来場者数は5568人。同課は「毎年多くの来場があるが、海上を含め、天候が安定するまで海に入らないでほしい」と呼びかけた。

奄美市住用町の「黒潮の森マングローブパーク」(寿浩義支配人)では、1日5回実施するカヌーツアーを午前10時の1回目だけ行い、以降を中止。施設関係者によると、夏のシーズンは1回当たり50艇が参加する島内外で人気のスポットだったが、担当者は「風が出てきたので、安全を配慮した」。5日もツアー中止を決定している。

2日から3泊4日の日程で家族と奄美大島に初来島した、東京都東村山市の会社員・林俊史さん(38)は「(カヌーは)子どもが楽しみしていたので残念」と話し、帰りの空路が欠航したことについて、「まさか台風で足止めになるとは。帰り便の手配はこれから」とあきらめ顔だった。