「ナスミバエ」沖永良部島で確認

沖永良部島で確認された重要病害虫のナスミバエ(農林水産省ホームページより)

島トウガラシ
ナスミバエが好んで寄生する島トウガラシ

島トウガラシなどナス科果実に寄生し腐敗

 

重要病害虫、移動規制の対象外

 

 重要病害虫の一つで島トウガラシやナス、ピーマンなどナス科の果実に寄生し腐敗させる「ナスミバエ」が今年に入り沖永良部島で確認されていることが農林水産省への取材でわかった。ミカンコミバエ、ウリミバエなどのような植物防疫法による移動規制の対象にはなっていないが、沖縄県内では発生地域が拡大している。奄美でも他島にも広がっている可能性があり、関係機関が果実調査などを進めている。

 同省によると、ナスミバエは東南アジア、台湾、ハワイなどで発生。寄主範囲はトウガラシなどナス科植物の生果実で、果実内でふ化した幼虫が食害することが報告されている。ミカンコミバエなどとは異なり、急激にまん延して大きな農業被害をもたらすものではなく、「海外(ハワイ)の報告でも通常防除が行われていれば被害がないと報告されている」としている。

 日本では1984年に与那国島で、2010年に沖縄本島で発生を確認。この間、農水省では、与那国島での島内全域での定着を受けて04年11月、植物防疫法に基づく農林水産大臣によるまん延防止のための防除指示を出し、沖縄県においてナスミバエまん延防止防除事業により薬剤散布、寄主植物除去および不妊虫放飼による防除を実施するとともに、その防除効果を確認するための調査を実施してきた。

 同省消費・安全局植物防疫課によると、04年11月に通知(発生確認を受けての調査と適切な防除)を沖縄県だけでなく鹿児島県にも行っているという。同年に鹿県でも確認されたためで、「緊急防除(移動規制)の対象ではないナスミバエは都道府県の対応を求めている。今年に入り鹿児島県では沖永良部島でナスミバエが確認されたとの報告がある。今後も発生の確認が予想されることから他島を含めて果実調査が行われていると聞いており、鹿児島県により適切な防除、調査をお願いしたい」(同課・島田和彦課長)。

 奄美でのナスミバエの確認は散発的なものとみられている。同課は「発生の拡大を防ぐためにも好適寄主植物である野生の島トウガラシやイヌホウズキの果実を持ち出さないよう注意してもらいたい。庭先などで栽培している場合も必要ない場合は適切に処分してほしい」と呼びかけている。

 なお、ナスミバエは寒さに弱く、越冬の関係で生息範囲は種子島以南とされている。沖縄県では発生地域が拡大。16年度の同県の調査では前年度から11市町村増えて過去最多の32市町村で被害が確認された。

 ナスミバエの奄美での確認について農家からは「移動規制にはならないが、作物に被害を与える重要病害虫に変わりはない。発生状況について風評被害の懸念から情報開示に慎重になるのも理解できる。しかし発生を拡大させないためにも確認された地域のほか、適切な管理、野生のものを持ち出さないなど正しい情報を住民に伝えるのは大切なこと。ミカンコミバエについても必要な時期に行えば一回の防除で済む。また、ミカンコミバエとミカンバエの成虫を混同している農家もいる。関係機関は情報の周知に努めてほしい」との指摘がある。
 メモ
 ナスミバエ 体長6㍉くらいの小型のハエの一種で、寄主範囲はトウガラシ等ナス科植物の生果実に限られており、ミカンコミバエ種群やウリミバエと比較して繁殖力は弱いとされている。