「害獣」を「資源」化

有害鳥獣駆除事業の囲い罠(わな)で捕獲されたイノシシ(天城町農政課提供)

獣肉加工施設で〝一石二猪〟?

 

天城町、県内初の取組み

 

 【徳之島】全国的に有害鳥獣被害が深刻化している中、天城町は、同駆除事業や狩猟期間中に仕留めた「害獣」のイノシシを「資源」とみなして利活用し、「食からの地域おこし」を目指す町獣肉加工施設を建設する。世界自然遺産登録の実現も視野に観光、地域振興にもつなげるジビエ料理への活用や新商品の開発も目指す。国庫補助事業を活用。自治体では県内初の取り組みだ。

 同町農政課によると、町内でもサトウキビの生育初期の掘り起こしや収穫期の食害を中心にイノシシによる農林作物被害が拡大。農林業者の要望で2012年度~14年度、鳥獣被害対策実践事業で侵入防止柵を南北延べ6万5400㍍設置するとともに、囲い罠(わな) も3基導入して被害軽減に努めた。

 農作物の被害額は12年度の2847万1千円から16年度は477万2千円まで減少したが、町猟友会(17人)に依頼した駆除事業による捕獲頭数は毎年200頭前後(ほか狩猟期間に約100頭)。だが、捕獲されたイノシシは個人消費や埋設処分されるなど、処分に苦慮しているのが現状という。

 町当局は猟友会や協賛企業などで同町有害鳥獣被害防止対策協議会(会長・大久幸助町長)を設置して利活用を検討。獣肉加工処理施設を設置して解体処理から加工・流通・販売までを総合的に取り組むことを決めていた。

 設置場所は同町浅間の町総合運動公園近く。施設の延べ床面積は72・36平方㍍、事業費は2024万2千円(国庫補助約55%)。来年2月までに完成させ、町猟友会に管理運営を委託。4月以降の稼働を目指す。当面は精肉を主とし、需給度によっては町外からの受け入れも検討。将来的にはジビエ料理の提供施設の併設も検討。

 同設置によって、適切な加工処理体制とジビエ肉の流通体制の構築、有害鳥獣による被害軽減と猟友会の捕獲活動・運営の充実、後継者育成に期待。野生獣の食肉(ジビエ)利用には、捕獲後の処理で食味が大きく変化するため研修も徹底。自然遺産登録も視野に観光・地域振興につなげるジビエ料理の活用、新商品の開発、島内消費の普及も目指すという。