世界自然遺産へ IUCN現地調査開始

湯湾岳登山口で説明を受けるIUCNのスコット氏(左から2人目)とバスチャン氏(同3人目)

湯湾岳山頂 付近の照葉樹林視察

 

「ありのまま見て客観的判断を」

 

 IUCN(国際自然保護連合)は12~15日にかけて、奄美大島と徳之島で奄美の世界自然遺産登録に向けた現地調査を開始した。IUCNの専門家2人が来島し、国、県、地元自治体関係者などから外来種対策や遺産候補地の価値の説明を受けて調査し世界遺産委員会に結果が報告される。地元の関係者からは、現地調査を歓迎し実態を見てもらいたいなどの声が聞かれた。

 専門家2人は13日、世界自然遺産候補地の湯湾岳山頂周辺で調査。国、県、専門家など約20人が同行し、付近の亜熱帯照葉樹林を視察した。

 大和村側の湯湾岳登山口で、環境省奄美自然保護官事務所の岩本千鶴自然保護官がIUCNから派遣されたスコット・パーキン氏とバスチャン・ベルツキー氏に通訳を介して湯湾岳の概要および奄美大島の希少種など説明。続いて世界自然遺産候補地科学委員会の米田健副委員長(鹿児島大学名誉教授)が、IUCNの2人に亜熱帯照葉樹林の雲霧帯での植生の特徴などを英語で紹介した。

 スコット氏とバスチャン氏は、奄美と沖縄に初来島。自然管理が専門のスコット氏と生物多様性に詳しいバスチャン氏の調査結果は、2月にユネスコに提出した推薦書の評価などと合わせて来年5月頃にIUCNから報告されるとした。

 IUCNの専門家の来島について奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は、現地調査を肯定。「ありのままを見てもらいたい。専門家は自然の状態と管理体制を調べるだろう。客観的な判断を下してもらいたい」と語った。

 ノネコの捕獲排除などに取り組んでいる徳之島虹の会の美延睦美事務局長は、「現地調査が、いよいよ来たかと受け止めている。ここまで準備してきた。ありのままの徳之島の自然を見てもらいたい。住民の一人として世界水準で自然を調査してもらえるのはありがたい」と話した。

 奄美野鳥の会の鳥飼久裕会長は、「世界自然遺産登録に向けて、粛々と受け止めている。奄美大島らしい景観や生きものなど見てもらいたい。IUCNから問題となっているノネコやマングースなど外来種の課題が出るかもしれない。官民一体となって取り組み登録を目指したい」と語った。