現地調査を終えて沖縄本島に移動する国際自然保護連合(IUCN)の専門家バスチャン氏(右)とスコット氏(奄美空港内)
IUCN(国際自然保護連合)は15日、世界自然遺産登録に向けた奄美大島と徳之島での現地調査を終えて次の調査地の沖縄本島に移動した。同行した国、県の関係者などが奄美空港駐車場で会見して、現地調査の概要や実際に観察した希少種などを報告。調査の結果は沖縄本島や西表島の調査と合わせて評価書にまとめられて、来年7月頃に開催される世界遺産委員会で登録の可否が決定する。
会見には、環境省那覇自然環境事務所の西村学所長、同自然環境局自然環境計画課の奥田直久課長、林野庁九州森林管理局計画保全部の林視=のぞむ=部長、県環境林務部の松下正次長兼奄美世界自然遺産総括監の4人が参列。西村所長が、12~15日にかけて行われた奄美大島と徳之島の現地調査の概況を発表した。
IUCNの専門家スコット・パーキン氏とバスチャン・ベルツキー氏は12日、沖縄から奄美大島に空路入りしナイトツアーでアマミノクロウサギなどを観察。オオトラツグミなども観察でき、西村所長は、「鳥が好きなスコット氏は、見るものが珍しく感動したようで、強い印象を与えられた」と語った。
13日は奄美大島の遺産候補地の核心部の3カ所の森林を視察。スダジイの森や湯湾岳の雲霧帯の森などを回り、その後に大和村の奄美野生生物保護センターで施設の機能やマングース駆除事業の探索犬のデモンストレーションなど披露して説明したという。
14日は、日帰りで徳之島を調査。地元NPOの外来種対策の取り組みを聞き、徳之島南部の核心部のオキナワウラジロガシの巨木や希少種のオビトカゲモドキとアマミノクロウサギなどを観察した。
15日は午前中奄美市内のホテルで、地元の観光、農林水産業、行政、自然関係団体から約50人が参加して意見交換会を開催。内容は非公開とされたが、西村所長は、「様々な関係者から、IUCN側に自然を残して行きたい思いが伝えられた」とした。
奄美大島と徳之島の現地調査を終えて、同行した西村所長は、「貴重な動植物をしっかり説明し保護対策もPRできた」と強調。今後についてIUCNから追加の質問が来る可能性もあるとし、マングースやノネコなど外来種対策に積極的に取り組む見解を示した。
IUCNは調査の結果を評価書にまとめて、「記載」「情報照会」「記載延期」「不記載」の4区分で勧告。来年7月頃に世界遺産委員会が、登録の可否を決議する。