食器製作カムィヤキ影響か

鹿児島大学国際島嶼教育研究センターで講演した伊仙町の新里亮人学芸員(23日、奄美市同センター奄美分室)

鹿大島嶼研・研究会 奄美でも同時中継

新里学芸員(伊仙町教委)大学生らに講演

鹿児島大学国際島嶼教育研究センターは23日、鹿児島市の同センター会議室などで第182回研究会を行った。奄美会場の同センター奄美分室でも、インターネットの無料通話サービスを利用して研究会を同時中継。講演でグスク時代の琉球列島の食器類の生産・流通に関する研究が報告された。

講師を、伊仙町教育委員会の新里亮人学芸員が担当。演題「琉球国成立前夜の考古学的研究」で、グスク時代の琉球列島から出土する食器類の編年研究からそれらの生産、流通、消費の様相を明らかにし経済状況の推移について考古学的に復元を試み講演した。

講師は、勤務する町の遺跡「徳之島カムィヤキ陶器窯跡」と「面縄貝塚」の国指定史跡を実現。埋蔵文化財行政だけでなく、徳之島産カムィヤキなどの研究にも取り組んでいる。

講師は参加した学生たちに、スライド資料で地図上の琉球列島と扱う時代の時期区分の名称など解説。分析対象とする食器を、遺跡などから出土する滑石製石鍋、徳之島産カムィヤキ、模倣土器にしぼり込み土器A群(底が深い甕型土器)と土器B群(石鍋などを模倣した土器)に分類して奄美や沖縄の遺跡の資料を集成した。

1429年の琉球王国成立より以前の時期は、グスク時代に位置付けられ按司=あじ=と呼ばれる有力者が海上交易などで勢力拡大を図っていた時代と指摘。「この頃の奄美には、本土から回転ろくろなどで製作する土師器=はじき=が持ち込まれていて、奄美でもそれを模倣して在地土師器が作られるようになった」とした。

また交易を通して窯で焼かれた須恵器や貿易陶磁器も奄美各地の遺跡から発見。A群とB群の土器の器壁の圧痕を観察すると、A群は植物が多くB群は穀物があるので「B群の時期は、農耕が始まっていたかもしれない」と推察した。

グスク時代には、沖縄諸島の遺跡から供膳具が多様化して出土する傾向があると示唆。奄美でも時期が下ると、器種も増えて様々な食器が製作されて「11世紀前半に、徳之島でカムィヤキ生産が始まったのではないか」との見解を示した。

講演終了後に、鹿児島会場と奄美会場から質疑応答を実施。テレビ電話のようにインターネットで講師から回答が行われた。