在宅医療看取りの「決断」実例を基にした朗読劇も=9日、天城町防災センター
【徳之島】徳之島地区の2017年度「在宅医療介護連携推進事業シンポジウム」と「多職種合同事例検討会」(徳之島3町主催)が9日、天城町防災センターであった。テーマは「わきゃや(我が家)・わきゃまち(我が町)が一番大好きな場所!!~住み慣れた地域で自分らしく過ごし続けるための選択を考える~」。地域での取り組み事例の発表や実例の朗読劇、基調講演などで考えた。
高齢者や障がい者など必要とする全ての人が、本人や家族の選択のもと住み慣れた地域や自宅で、在宅医療ケアを受け、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けさせるのが目的。徳之島3町が2014年度から取り組んでいる県事業「地域における訪問看護職等人材育成支援事業」の一環。3町の医療・介護関係者や住民など約120人が参加した。
シンポは、県看護協会の田畑千穂子会長をコーディネーターに、▽天城町「前野長寿会」(高齢者組織)の中水勝久会長=同町前野▽妻を看取った在宅介護体験者で元町議の平野清一郎さん(90)=兼久=が体験を発表。中水さんは、介護予防のサロン活動と併せた長寿会定例会(月1回)で、若手女性会員ら手作りの昼食会(1食300円)も設定し1人暮らしを含む男性陣の参加増につなげたことも紹介。
町高齢者組織の事務局長などの苦労も積極的に買って、地域活動に奔走していることに中水さんは「(高齢化は)誰もがやがては通る道。元気なうちに先輩方と関わり、自分も変わることが自分の将来への投資にも。生き生きと暮らしたい同志を求め、最終的には人に迷惑をかけず、自宅でぽっくりと最期を迎えたい」との心境も吐露した。
平野さんは、16年前に妻が体調を崩して入院後、宅配給食サービスも利用しながら在宅介護を続け、一時は自力歩行ができるまで回復させた。息子夫婦の住む沖縄に車いすで旅行に行ったこと。その息子夫婦がUターンして食生活の大きな支えになった「夫婦・家族愛」を回顧。「私も介護される日を迎えると思うが、入院した場合、延命処置は受けたくない」とも付け加えた。
朗読劇は天城町包括支援センター職員など6人が担当。「10年後に脳血管障害を再発し自宅で最期を迎えた事例」を通して患者本人や息子夫婦、孫、医師、訪問看護師の間で揺れる葛藤、在宅で看取る息子の決断。その意思決定支援、連携のあり方も考えた。
県看護師協の田畑会長が基調講演し、①国民ニーズの「住み慣れた地域で安心して最後まで暮らしたい」②病院の役割の明確化(機能分化)③自宅で暮らしながら医療を受けられる仕組み(在宅医療)―の医療改革の方向性なども解説。引き続き田畑会長を講師にした「多職種合同事例検討会」で、医療・介護連携の重要性を再認識し合った。