「津之輝」収穫シーズンへ

元井農園津之輝

12月から収穫期に入る津之輝。年末贈答用の柑橘として需要が期待されている(元井農園で)

水分管理課題、裂果発生

 

年末贈答用の新柑橘

 

 12月に入り奄美大島では新柑橘=かんきつ=「津之輝=つのかがやき=」の収穫シーズンに入る。露地栽培で年内出荷が可能で、お歳暮需要が期待されているが、今期は果実の裂果が目立ち生産量への影響が懸念されている。生産安定には水分の管理方法が課題の一つとなりそう。

 津之輝は、「清見」に「興津早生」を掛け合わせた柑橘に、「アンコール」を掛け合わせてできた品種。今後、タンカンとともに果樹農業の柱としての成長が期待されている。

 2010年の導入以降、栽培面積も増えつつあり、今期からはJAの共販取り扱いも始まる。これまでの着果状況の考察から関係機関は栽培地として平場(下場)を中心に推進しているが、県大島支庁農政普及課によると、今期の生育では9月と10月に果実が裂ける裂果が発生した。

 7~8月の夏場少雨が続き、降雨は台風によってまとまった量がもたらされた中、果樹園土壌の水分状況が影響。「乾燥により果実の肥大が抑えられたのに、台風の雨で急に水分が増えたことで裂果につながったとみられている」(農政普及課)。▽乾燥しやすい土壌▽傾斜地▽粘土質の強い▽耕土が浅い―といった果樹園で裂果が目立ったという。裂果対策として水分の蒸発を防ぐ敷き草、有機堆肥の投入などの取り組みが求められそう。

 農政普及課は「果樹園の中には裂果の発生で7割の果実が落ちたというところもあるようだ。今期の津之輝生産量は当初の見込みより減少する可能性がある。ただ裂果が発生した時期は、摘果が必要な時期でもあり、裂果分がすべて減収ということではない」と指摘する。収量への影響は今後明確になる。

 この裂果被害、奄美市住用町にある元井農園は1割程度だった。津之輝が栽培(面積30㌃、約180本)され収穫を迎える果樹園は国道沿いの平場にあり、元井孝信さんは「耕土が深く、粘土質の土壌で地下水に恵まれている。敷き草を施しており、裂果対策では水分の管理がポイントになる。津之輝の栽培は平場が向いている」と話す。果皮を薄くするため摘果をあまりしない農家もいるが、「摘果を施し2Lや3Lの大玉化を図り、果皮もやや厚くしている。これも裂果対策につながっているのではないか」と元井さん。

 農政普及課では11月28日、元井農園で糖度のサンプリング調査をしている。それにより平均糖度は12度もあり、十分に収穫できる状態。元井農園は今週末に収穫を予定していたが、天候の関係から来週に延期。収穫した果実は1週間ほどの予措=よそ=(果皮を乾燥させる貯蔵方法。果肉から果皮への水分移行が減少し、味が落ち着き糖・酸のバランスが良くなり、味がまろやかになる)を経て、12月中旬からの出荷を計画。今期収量は約2㌧を見込んでいる。