NACS―J自然観察指導員などが小笠原諸島で行っている外来種の島内移動を防ぐ足ふきマット
外来生物問題は世界的に大きな問題であり、日本の法律においても、生物多様性基本法、外来生物法など多くの法律に対策の必要性が示されている。「入れない(悪影響を及ぼすおそれのある外来種を自然分布域から非分布域へ移動する)」ことが重要であるが、対策が不十分である。
そのため次々に侵入してしまった外来種に対して駆除活動が続けられ、経費と労力が膨大化している。例えば工事用、農業用などの資材に付着して非意図的に入る外来種へは対応ができておらず、国内で進行中の計画には大量の埋め立て土砂の移動を伴う事業などが規制されずに存在している。
このような背景のもと、外来生物対策の「入れない」対策の徹底を日本政府に求める勧告を、2016年9月にハワイで開催されたIUCN(国際自然保護連合)第6回世界自然保護会議にて提案し、採択された。提案者は日本自然保護協会、WWFジャパンなどの6団体である。勧告「島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化」には、生物地理学的領域を越えた外来生物種の移入は、たとえ国内であっても生物学的侵略の危険性のある行為であることの認識を求めている。
沖縄島の辺野古で計画されている米軍基地建設の埋め立てに、奄美大島と徳之島からも土砂が運ばれる予定である。奄美大島と徳之島は沖縄島と比較的近い距離に位置するものの、島ごとに生態系が異なるため土砂の移動に南西諸島における島嶼間の移入種のリスクとIUCN勧告に伴い沖縄島に持ち込まれる外来生物が大きな問題となる可能性がある。ましてや生物地理区分も気候帯も異なる本土(瀬戸内、門司、天草、佐多岬、五島)から持ち込まれる土砂については、より大きな脅威となることは明白である。
今後、世界自然遺産登録の機運も高まり、軍事と観光活動が増えることが予想されるなか、このような問題が次々に生じることと思われる。世界自然遺産のあり方、外来生物対策のあり方が問われている。
*勧告文はこちらからご覧いただけますhttp://www.nacsj.or.jp/katsudo/henoko/2016/08/iucn-6.html