外来生物問題シンポ

奄美の自然の価値などを講演した自然写真家の常田さん

20171217(外来生物シンポ)②
ACNの出前授業を受けた中学生の発表(市中)

生物多様性の保全重要

 

普及啓発活動継続の必要性認識

 

 WWF(世界自然保護基金)とNACS―J(日本自然保護連盟)は17日、奄美市名瀬末広町のAiAiひろばで「奄美大島における外来生物問題を考えるシンポジウム 島嶼の生態系を守るため」を開いた。一般など約60人が参加し、外来生物問題に関する講話や中学生の発表などから更なる普及啓発継続の必要性を認識した。

 同シンポは、2月の東京開催を皮切りに今回で3回目。シンポの前半部は、「奄美の自然と島嶼地域での外来生物問題」と題して自然写真家の常田守さんと、NACS―Jの安部真理子さん、WWFジャパンから権田雅之さん、草刈秀紀さん、辻村千尋さんの3人が登壇した。

 常田さんは奄美大島の自然の価値と世界遺産について、自身が撮影した貴重な写真やスライド資料で解説。大和村の小川岳を源流とする住用川流域の自然を紹介し、「奄美大島は、世界自然遺産にならないといけない島。国立公園になり、指定から外れた地域をどうやって守るか。どう残して行くか。これからは島民が問われる」「自然を守り次世代に残していかなければならない。アマミノクロウサギも大事だが、生物多様性を守っていくことが大事」と語った。

 安倍さんは、外来種が人為的に持ち込まれた生物で生態系や人間生活への影響があると指摘。外来種対策について、「侵入を完全に防ぐことは困難。早期発見、早期対応のための住民を含めた監視体制の構築が必要」とし、「奄美は真に生物多様性保全ができる形の世界自然遺産を目指すべき」と提言した。

 権田さんは、外来生物問題の国際的取り決めの「生物の多様性に関する条約」(CBD)の趣旨や侵略的外来種など解説したツールキットを紹介。辻村さんは東京開催の外来生物問題のシンポを報告し、草刈さんは、12年前に奄美大島と沖縄で行った外来種アンケート調査を発表した。

 休憩に続き後半は、「島の外来生物対策の活動事例」としてACN(奄美ネコ問題ネットワーク)、朝日中・市中、WWFジャパン、市環境対策課などが登壇。ACNの鳥飼久裕副代表(奄美野鳥の会会長)はACNの設立経緯や啓発活動に触れ、「今後も更に啓発活動を徹底し、出前授業の継続とエリア拡大に取り組みたい」と話した。

 市中学校からは、1年生の中村海翔君と田中大開君が夏休みの自由研究で取り組んだノラネコ調査を報告。「市集落では、幼獣が観察されたので繁殖が進み増加が予想される。今後も、猫とのよりよい付き合い方を考えたい」(中村君)「観察範囲を広げて、ノラネコの行動範囲を調べたい。よりよいノラネコとの接し方を学習していきたい」(田中君)。

 朝日中1年の上野凜さんと福島英瑠さんは、「奄美大島を世界自然遺産へ」のテーマで同校が取り組む環境対策など紹介。「マングースバスターズやACNの出前授業などから、希少野生動植物の保護や外来種対策を学習し、自分たちにできることとしてトイレの消灯、使わない教室の消灯、節水などに取り組んでいる」と発表した。

 WWFジャパンの草刈さんは、環境教育教材トランプカード「ピンチくん」とモデル授業実施を説明。奄美市環境対策課の神田あんずさんは、新しい猫の適正飼育条例と補助制度を解説した。
 アンケート用紙を回収し、質疑応答を実施。「ノネコの収容施設はどうなっているのか」や、「外来植物の対策はどうしているのか」などの質問も。シンポを振り返り、事務局は「外来生物問題は、普及啓発が鍵。今後も幅広く集落の人などにも働きかけたい」とした。