タンカンにクロウサギ被害

定点カメラに撮影されたアマミノクロウサギ(提供写真)

樹皮をかじられたタンカン

大和村 福元地区 共生へ対策急務
映像記録、実態調査を検討

 大和村福元盆地のフォレストポリス近くのタンカン畑で、国の特別天然記念物アマミノクロウサギによる被害が出ていることが2日、分かった。農家は電気柵を設置し樹木にビニール袋を巻き付けるなど対策しているが、被害は止まず苦慮している。産業と希少種の共生へ対策が求められそう。

 タンカンに被害を受けたのは、農業を営む奄美市在住の60代男性。男性は同村名音字深山塔に約140アールのほ場を有し、5年前にタンカン約650本を植栽している。

 ここ数年その一部にクロウサギによるものとみられる被害(樹皮をかじられる、枝や葉を食べられるなど)が出ているので、果樹園の周囲に電気柵を設置。また木に被害を受けないよう厚手のビニール袋を巻くなどして、防止策を講じている。

 男性は巣穴が園の中や周囲にあることから、アマミノクロウサギによる被害でないかと推察。「タンカンの樹皮がかじられることで、樹勢が弱くなり成長や結果も遅れ、やがて枯死するなど農家にとって死活問題」と語った。

 自主的に対策しているが、ビニール袋を被せ電気柵を設置しても被害は止まず個人での対応は限界だという。JAあまみ大島事業本部生産部会連絡協議会果樹部会の大海昌平会長は、「何らかの対策を取らないとならない。タンカンだけでなく、他の作物にも影響が出るかもしれない。福元盆地以外の産地でも、クロウサギのふんが見つかっている。こういう問題があることを広く知ってもらいたい」と話した。

 鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室の鈴木真理子プロジェクト研究員は、農家から被害を知り昨年11月下旬からクロウサギによる農作物被害調査に着手。園に自動撮影の定点カメラを設置し、映像を記録するとともに短期間に起こった被害木の位置などを調べた。

 鈴木さんは、記録映像からクロウサギによる被害と考察。「今後も被害の度合いや季節変化など調査し、電気柵の活用方法などに協力したい」と説明。「現地はクロウサギの生活圏にほ場がある感じ。農家にも生活がある。対策を島全体で考えていかないとならない」とした。

 県大島支庁の東洋行農林水産部長は、「タンカンに被害が出ているのは聞いている。被害実態調査を検討している。関係機関、団体と協議して効果的な防止策あれば取り組んでいきたい」と話した。