ミカンコミバエ 台湾研究者迎えシンポ

農研機構と県が、台湾と進めている試験研究などを発表するシンポジウムが開かれた

今後の研究課題考察
「根絶ではなく総合的対策」

 奄美大島では、2015年12月13日に果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの緊急防除省令が施行され、翌年の7月14日の解除に至るまでの約7か月間、対象果実の移動規制などが敷かれた。その後も、徳之島や沖永良部など県内や沖縄県でも再侵入が繰り返されているが、農研機構(本部・茨城県)と県は、農林水産省の事業プロジェクトの一環で、台湾の研究組織とミカンコミバエの再侵入・定着防止対策に向けた試験研究を2016年から進めている。それに関連するシンポジウムが5日、鹿児島市の天文館ビジョンホールであった。台湾の研究者を迎え、飛来源の一つに考えられている台湾での現状、また対策などについて発表。両国の状況の違いも踏まえ、今後の防除対策の課題について考えた。

 進めている事業は、農林水産省の革新的技術開発・緊急展開事業の一環で、シンポジウムは同機構九州沖縄農業研究センターの主催。

 台湾行政院農業委員会農業試験所のファン・ユービン研究員が台湾でのミカンコミバエ発生に関する現状などを報告した。冒頭ミバエに関し、多くの昆虫とは逆でオスがフェロモンを出すこと、交尾後にメスが果実に卵を産み付けるなどの生態を一部紹介。メスを誘引する香りの成分研究を引き続くテーマの一つに挙げた。

 ミバエの防除を巡る歴史については、「1970年代ごろから幾つかの技術が向上したが、根絶はならなかった。オスを殺す対策に変え、今は飛行機を使うなどの防除方法を取っている」、現在の国としての取り組みに関し「根絶ではなく総合的な対策を取っている」とし「防除とモニタリングの二つを合わせてやっている」と説明した。

 また、農家主体の防除も推奨しており「農家自らトラップを作ったり、落下果実の迅速な処理などチームとして防除している。オスを殺すことで数を減らすことができる」などと事例を紹介した。

 モニタリング調査に関しては、国内61ほどの市町村にわたり、約550か所のポイントを設置。10日間ごとの分布に関するデータが地図上で示され、農家にも開示されているという。

 今後については、気候の変化による分布数の統計データなども活用し、より効果が高いトラップの改良などを課題に挙げた。

 このほか、同機構の関係者らによる、防除対策の研究成果などのほか、奄美大島における15年の再発生についての発表もあり、鹿児島農業開発総合センター大島支場の山口卓宏氏が登壇。南部で確認されてから、北部を含む全域に拡大していった経過、寄生が見られた果実の種類、投入されたテックス板の数量などデータを示しながら、再発生から根絶に至るまでの経緯の解説もあった。