アオサ養殖場にも漂着

奄美群島唯一のアオサ養殖場のエリアでも油状漂流物(円内)を確認。調査に当たる県職員ら=6日、天城町

天城町浅間、松原海岸
漁家「油分は大敵」懸念

 【徳之島】奄美群島の北部域の海岸線で、風化した重油か原油とみられる漂着物が大量に見つかっている問題で、徳之島では、島北西部の天城町浅間―松原海岸にかけた群島唯一のアオサ(ヒトエグサ)養殖場のエリア内でも確認された。7日夕現在「点在」的に確認ができる程度だが、日増しに目立ってきた。養殖漁家は「アオサにとって油分は大敵。今後量が増えノリ網に付着すると、生育も品質もアウトになる」と不安を募らせている。

 県大島支庁徳之島事務所などによると、同島では4日の徳之島町金見崎―手々海岸に続き5日以降は、アオサ養殖場のある天城町同海岸部でもついに確認された。砂浜に帯状に連なった徳之島町同に比べ、同質とみられる高粘着・風化油状の漂着物は7日現在、「点在」状態。収穫が始まったアオサへの直接的被害は今のところないが、その量は増加傾向にあるという。

 徳之島空港に面した同海岸域の広大な公有水面を活用したアオサ養殖。海がしけて一本釣り漁の機会が減る冬季のオフ対策として約36年前、地元漁家たちが研究会をつくって手探りで着手したのが始まり。奄美海域には天然物の胞子が豊富に浮遊し、自家採苗(種付け)でコスト削減できるメリットも。高齢化や後継者不足で養殖漁家は激減したが、今期は2戸の漁家が計570枚のノリ網(18㍍×1・5㍍)を張って、群島内唯一のアオサ養殖の栽培漁業を守っている。

 天城町「ゆいの里漁業集落」代表で、同養殖の伝統を守る1人、宮口幸夫さん(64)=同町松原=は「アオサにとって油は大敵。今のところ影響はないが、沈没タンカーからの流出油だった場合、漂着が長期間続く可能性も」。アオサの生育と品質保持にノリ網に付着した泥落とし作業の重労働にも耐えているが、「油分は洗っても落ちない。アオサが栄養不足になって変色して品質もアウトだ」と懸念する。

 今期は北風が強くアオサは色(濃緑色)のりも良く高品質。収穫は始まったばかりで「今が一番大事な時期で5月ごろまで続く」。皮肉にもその北風に乗ったエマルジョン化状の「今後気温が上がると溶けて染み込みやすくなる。オイルフェンスなど公的対策の検討も欲しい。風評も懸念している」と話した。

 県徳之島事務所側も漂着量の増加による養殖環境の汚染を懸念。回収は、県マニュアルに基づいて地元関係機関などと共同で取り組む方針だ。