ホエールウォッチング講演会

奄美大島のホエールウォッチングなどについて講演した森教授

 

利用と保全のバランスを

 奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は10日、奄美市名瀬の奄美博物館研修室で「ザトウクジラ講演会2018」を開いた。一般など約30人が参加し、ホエールウォッチングに関する講演を通して奄美大島のホエールウォッチングの可能性などを学んだ。

 同研究会は奄美近海で冬季にザトウクジラが繁殖のため来遊し増加傾向にあることから、奄美クジラ・イルカ協会と協力してザトウクジラの出現数や個体識別調査を実施。また例年ザトウクジラの来遊海域としての奄美大島近海の価値やホエールウォッチングのあり方などを理解してもらうために、一般住民対象の講演会を開催している。

 今回の講演会は、帝京科学大学の森恭一教授が「世界自然遺産とホエールウォッチング~小笠原の事例を交えて~」の演題で講演。講演に先立ち、興会長が17年度奄美大島周辺海域における鯨類調査を発表。興会長は「17年シーズンは、ザトウクジラ683頭が出現。18年のホエールウォッチング参加者は、2千人を超えるだろう」と話した。

 森教授は同大学に勤務する前に、小笠原ホエールウォッチング協会事務局長・主任研究員として在籍。現在大学では、鯨類学、海洋観光資源論などの研究に従事している。

 11年に世界自然遺産となった小笠原について、生態系の重要性を指摘。「小笠原は世界自然遺産になったことで、自然の保全対策がより促進されるようになった。一方で観光客が増加したが、満足度の低下など厳しい声もあった」と語った。

 小笠原のホエールウォッチングは、ザトウクジラだけでなくマッコウクジラのウォッチングなどで通年実施可能だという。ウォッチングのためのルール作りについて、「トップダウンかボトムアップか合意形成が重要。また運用には必要に応じ見直しが必要」と話した。

 ホエールウォッチングについて、過剰に行われるとザトウクジラへのストレスにつながる問題に言及。「課題解決のためにクジラにも人にも優しい操船を行い、予防原則で利用と保全のバランスが取れたウォッチングを行ってほしい」「奄美でも、奄美らしさを生かしたホエールウォッチングを行い、ぜひ盛り上げてもらいたい」と語った。