龍郷町戸口川で撮影された右肩と左目周辺に油が付着したコウノトリ=宮山清峰さん撮影=
今月1日から奄美群島各地の海岸で油状漂着物が確認されている。環境や産業などへの様々な影響が懸念される中、奄美市名瀬の宮山清峰さん(68)は11日、龍郷町の戸口川では油が付着したコウノトリを発見し、写真に収めた。
コウノトリへの油付着は宮山さんが撮影に出かけたところ偶然発見。肩の付け根部分と左目の周囲に油の付着が確認できる。原因について宮山さんは「コウノトリは好奇心が強いため、海岸に落ちていた油をくわえ、羽繕いなどをして付着したか、水中に頭を突っ込んだときに付着したのではないか」と推察。宮山さんは13日にも同川でコウノトリの撮影を行った。
同個体は2005年以降、コウノトリの野生復帰を目指して人工繁殖に取り組む兵庫県立コウノトリの郷公園で生まれたオス。2013年12月ごろから奄美大島に住み着いている。奄美野鳥の会の鳥飼久裕会長は「コウノトリのような大きな鳥なら飛ぶことに支障はない程度だが、小さな鳥は、羽に油が付着すると行動が制限される。早く撤去しなければ様々な生きものに影響が出るだろう」と話した。
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一方で、漁業への影響も懸念される。奄美市名瀬のスーパーには13日も様々な種類の鮮魚などの海産物が並んだ。同店鮮魚コーナー担当者は売り上げについて「冬場は魚の消費が落ち込むが、鍋用のアラや、切り身などの売れ行きは好調」と語る。漂着油の影響による価格変動や水揚げ量の低下などは今のところないとのことで、同担当者は「冬は多くの魚の産卵時期で、全般的に脂がのっていておいしい。鮮度の高い魚を仕入れているので、安心して魚を食べてほしい」と呼び掛ける。
名瀬漁協では風評被害を恐れる声も聞かれた。同漁協の池山育太=いくひろ=参事は「今のところ漁業者や魚への被害はない」と話すが、「もし風評被害が広がれば、奄美の魚が汚染されているというイメージがつく。価格が下がってしまう可能性はある」と心配する。冬は海況により漁に出られない日が多く、重なれば大きな痛手につながることも考えられる。対応策などにも頭を抱えており、池山参事は「不安はある」と胸の内を語った。
こうした状況に対し、渡嘉敷奈緒美環境副大臣は、14日に奄美大島を訪問し、漂着・対応の状況の現地視察を行う。予定では奄美市名瀬の海岸3カ所、同市笠利町の海岸1カ所を巡り、対応の方向性の確認などを行うとしている。