国立公園・特別保護地区に 違法「昆虫トラップ」

奄美群島国立公園・特別保護地区の「剥岳」林道沿いの国有林に、違法設置された昆虫トラップの1つ=19日午前、徳之島町

自然公園法違反の疑いで徳之島署も捜査に入った

自然公園法違反、徳之島署も捜査
「剥岳林道」沿い

 【徳之島】奄美群島国立公園・特別保護地区に指定された「剥(はげ)岳林道」(徳之島町大原―天城町三京)沿いの国有林内に、島外者の仕業と見られる複数の昆虫トラップが違法に設置されているのを自然保護推進員が発見した。環境省徳之島自然保護官事務所や林野庁徳之島森林事務所など関係機関も19日までに現場を確認した。徳之島署は自然公園法違反の疑いで捜査に乗り出した。

 見つけたのは、環境省委託の希少種盗掘・盗採防止などの巡視業務で同林道をパトロール中だった徳之島自然保護推進員でNPO法人徳之島虹の会会員の豊村祐一さん(62)=天城町三京=。18日午後3時すぎ、立木の枝に吊るされたトラップ計5個を相次ぎ発見した。

 いずれも書類用のクリアファイル(ポリプロピレン製)をロート状に手作業で加工し、小型LDEランプの光源をセット。発見時も点灯したままで、夜間に誘引されたと見られる蛾(が)類が数匹入っていた。

 現場では当時、木の棒に白い布を巻き付け何らかの目印用と見られる束を手にした不審な男性(60歳前後)と、林道ゲート前に停車中の不審なレンタカーも確認。19日朝、現場に駆け付けた徳之島虹の会の仲間らも、同一人物と見られ慌てた表情の男性が乗ったレンタカーと離合していた。

 国立公園の地種区分最高位の「特別保護地区」は、公園の中で特にすぐれた自然景観、原始状態を保持している地区。工作物の設置や希少種はもちろん動植物の採取が一切禁じられている。世界自然遺産登録に向け、核心地域に包含される「剥岳林道」については徳之島森林事務所が一昨年12月、徳之島・天城両町サイドに一般車両の進入を規制するゲートを設置して施錠。他機関の監視カメラも設置されている。

 森林保全監視員も兼務している豊村さんは「一生懸命に自然を守っているが、こうした心無い行為は今後も続くと思う。『ここ(徳之島)で盗採はできない』と外部に意識させることが大事。地元が横の連携でスクラムを組んで監視を続けることが効果的だと思う」。

 徳之島自然保護官事務所の沢登良馬自然保護官(27)は「トラップの目的が分からないが、世界自然遺産登録を目指す島で起きたのは非常に残念。この自然を残すためには島内外の人々の意識が大事。これをきっかけに自然保護の意義をしっかりと伝えていかなければならない」と話した。

 一方、徳之島署はトラップを証拠品として押収するなど捜査を進めている。