ケナガネズミ捕食の衝撃

ジャンプしてケナガネズミを襲い(上)、口にくわえて立ち去るネコ=19日午前4時37分ごろ(天城町企画課提供)

天城町当部「アマミノクロウサギ観察小屋」(資料写真)

天城町観察小屋カメラに ネコの脅威まざまざ

 【徳之島】天城町が希少野生動物の出没頻発地区の同町当部(とうべ)「南部ダム」沿いに設置している「アマミノクロウサギ観察小屋」。ウェブでライブ中継もされているその夜間観察用赤外線カメラに19日未明、あろうことかネコが、国指定天然記念物のケナガネズミを捕食する衝撃的シーンが記録されていた。同島では先月11日、ノネコによると見られるケナガネズミ2匹の死骸が北部地区の林道で確認されたばかり。関係者に再び衝撃を与えている。

 「アマミノクロウサギ観察小屋」は、クロウサギによるサトウキビの新芽食害に悩まされていた「南部ダム」沿いの畑を町が取得し、2008年度県地域振興推進事業で建設(木造平屋33・3平方㍍)。観察モニターカメラ(定点4台)やデジタル録画機器なども整備。出没頻発エリアのダム敷地内のポイントには一般立ち入り規制の門扉も設置。奄美群島国立公園・第2種特別地域の「美名田山」(438㍍)エリアに含まれ、クロウサギをはじめトクノシマトゲネズミ、ケナガネズミ、アマミヤマシギなどの観察・記録例が多いという。

 同町企画課(自然保護専門員)が観察カメラ録画の点検で、ケナガネズミが映っていたのは19日午前4時34分。あろうことか、その約2分後にネコが現れたかと思うと、ジャンプしてケナガネズミに襲い掛かり、口にくわえて立ち去るシーンが収まっていた。

 観察カメラを設置したダム敷地の一角は、門扉(施錠)で一般立ち入りが規制されたいわば野生動物たちの〝聖域〟。だが、昨年12月下旬ごろからネコの姿がカメラに登場するようになり、ついには最悪の衝撃的シーンに変わった。現段階ではノネコか野良猫か、約600㍍離れた集落内の飼い猫なのかは不明という。

 今後の対応で、町側は「環境省徳之島自然保護官事務所と連携し、観察小屋周辺へのネコ捕獲わなを増設。観察小屋の映像確認も強化。関係機関と連携してネコ適正飼養の普及啓発に努める」。環境省同の沢登良馬自然保護官(27)は「観察小屋の映像はクロウサギなど希少種が多く見られ、観光客にも人気がある所。ここでネコによる捕食シーンが撮られたことは非常に残念」と指摘。

 ちなみに同島における環境省のノネコの捕獲実績は15年度87匹、16年度36匹、17年度(1月末)82匹。譲渡累計は計69匹。

 沢登自然保護官は「今年度に入ってノネコ捕獲数も非常に増えている。先月のノネコによるケナガネズミ(2匹)の捕食をはじめ今年に入って立て続けに発生。地元自治体や住民が連携し、本腰を入れてネコ対策を考えていかなければならない」と話した。