奄美の豊かな生態系や、外来種問題、ネコ問題などを講演した鳥飼さん
奄美市の県立奄美高校(二石政彦校長、生徒521人)は22日、同校体育館で「世界自然遺産登録に関する教育講演会」を開いた。全校生徒や教職員などが参加し、世界自然遺産候補地の奄美の自然や課題などについて学んだ。
世界自然遺産をテーマとした講演会は、同校で初めての取り組み。講師を奄美野鳥の会の鳥飼久裕会長(奄美ネコ問題ネットワーク副代表)が務め、「奄美の豊かな自然と、現状の課題について」の演題で講演した。
鳥飼さんは世界自然遺産登録に関してスライド資料で、昨年3月に奄美群島が国内で34番目の国立公園になり、国内には4カ所の世界自然遺産があることなど説明。「世界自然遺産になるには、世界的に重要な生態系、豊かな生物多様性などの条件がある。奄美大島の森は、生物多様性に富んだ生態系が成り立っている」と語った。
現状の課題について、▽開発などで生物の生息環境が奪われる▽ロードキル、盗掘など人の手による危機▽奄美にいなかった生物(外来種)の影響―を指摘。外来種問題で「マングースの問題は、バスターズの活躍で根絶を目指している。森ではノネコによる問題が起きてきている」と話した。
鳥飼さんは、実際にノネコがアマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどの希少種を襲っている動画を紹介。「奄美のネコ問題は、捨てられた飼い猫や集落付近の野良猫が山に入りノネコになり森の生物を襲っていること。ノネコ、野良猫、飼い猫は明確に区別できない」と強調した。
鳥飼さんは、「猫が悪いのではなく、飼い猫を野良猫やノネコにしてしまった人間が悪い」と示唆。ネコ問題を解決するために、①ノネコを山から減らす②ノネコになる可能性のある野良猫を減らす③飼い猫をノネコ・野良猫にしないようにちゃんと飼うことが必要―とした。
ノネコを減らすために、「ノネコ管理計案が決められ収容施設も整備中」と説明。「収容施設もいっぱいになり引き取る人もいない時は、殺処分を考えなければならない」。
飼い猫の適正飼養について、奄美大島5市町村の飼い猫条例を先進的と評価。「条例を守って、ノネコや野良猫を増やさないように飼うよう」に呼び掛けた。
講演を聴いて生徒会長の岡﨑慧斗さん(17)が、「まだまだ知らないことがあった。奄美を支えていくのは私たちなので、教わったことを意識して行動し、奄美を魅力的な島にしたい」と話した。