奄美群島沿岸を中心に漂着している油状漂着物の回収量は約90㌧に及ぶことが報告された(奄美市での回収作業)
3月定例県議会は22日、二日間の日程で代表質問が始まった。初日は自民党の桑鶴勉=鹿児島市・鹿児島郡区=、永井章義=奄美市区=の2議員が登壇。永井議員が取り上げた奄美群島沿岸を中心とする油状漂着物への対応で、三反園訓知事は回収作業により今月18日現在、約90㌧の回収量を報告するとともに、作業等に要した費用について国の補助金を財源に活用できることから配分を強く要請していることが明らかになった。
今月15日に奄美大島入りし、現地視察のほか、県職員と回収作業も行った知事は「回収作業は概ね順調に行われており、全体的には漂着量は減少しているが、引き続き全力で回収作業に取り組む」と答弁。漁業被害については「これまで確認されていない。現在、国により水産資源への影響調査、野生生物生態系への影響把握調査をしている。漁業や観光への風評被害がないようにしていきたい」と述べた。
漂着の現状と住民への回収作業マニュアルの周知、漂着の原因究明の状況・回収作業等に要した費用の負担の質問に対しては、古薗宏明環境林務部長が答弁。▽漂着現状=1月22日に宝島、2月1日に奄美市朝仁海岸で確認。その後、奄美地域全島と屋久島、十島村全域において確認▽周知=回収時の服装、回収方法、回収物の一時保管方法など記載した回収作業マニュアルを今月7日に作成し、県ホームページに掲載するとともに市町村と連携し周知に努めている▽原因究明=今月6日の第十管区海上保安部の発表によると、タンカー沈没位置付近の海面の油と沿岸上に漂着した油状物質についてサンプル調査をしたところ、「宝島、奄美大島・喜界島への漂着物に関しては、類似するものであるとの分析結果は出ていないが、ただちにタンカーの沈没と関係ないとは断定できない」とされた。また、21日の発表によれば「沖永良部島・与論島への漂着物については、類似していることが判明した」とされている▽費用=国の補助金を財源として活用でき、今月14日に環境副大臣に対し、補助金の本県への配分について知事が強く要請した―という内容が説明された。
永井議員は、2018年度末(19年3月末)で期限切れとなる奄美群島振興開発特別措置法の延長に向けた今後の取り組み、新たな取り組みである「リーディングプロジェクト推進枠」の概要・市町村と連携した活用を質問。東條広光企画部長は、法延長に向けて「総合調査報告書を今議会で議論の上、来月末までに決定し、4月に開催予定の国の奄振審議会に提出する。審議会において総合調査報告書等を踏まえつつ、奄美群島の振興開発に関し今後とるべき措置について7月ごろ国に対し意見具申が行われる見込み。その内容を踏まえ政府において法改正等の作業に着手される」と述べ、県としては今後、県議会や県選出国会議員、地元市町村と連携し総合調査の内容が法改正に十分反映されるよう国に働き掛けていくとした。
「リーディングプロジェクト推進枠」については、奄振交付金を活用し、新たな事業メニューを設けて戦略的な事業展開を図ることを目的とした予算枠の創設と説明。18年度は国費ベースで1億8千万円程度を想定。東條部長は「例えば奄美らしい観光スタイルの構築などテーマを設定した上で、市町村がテーマに沿った事業計画を策定し、事業を実施する。県としては事業計画が奄美群島の自立的発展に向けて効果的になるよう助言を行い、市町村の支援に努めていく」と述べた。