「瀬戸内町阿木名まちづくり委員会」ではそれぞれが忌たんなく意見を出し合う
今、集落有志でつくる「瀬戸内町阿木名まちづくり委員会」が面白い――。現在、奄美群島では世界自然遺産登録に向けて各集落独自の文化を保全・継承する「環境文化型国立公園」を柱の一つとして掲げ、積極的な取り組みを展開している。個々の取り組みは優秀で光るものも多々あるが、本当の意味での「集落づくり」としては十分に開花していない。
そんな中、未来図を描くというアプローチで集落の活性化に取り組んでいるのが「瀬戸内町阿木名まちづくり委員会」だ。広く集落住民が集まり、夢や意見を募り、自分たちの新しい未来のイメージを膨らませている。
阿木名は、瀬戸内町では古仁屋に次ぐ331世帯(632人=2017年4月末現在)が居住し、東・西の2集落がある。同委は、両集落の未来図をともに考え取り組む場として住民有志が16年5月に準備委員会を立ち上げ、同年10月から「集落」ではなく「組織」として本格的に活動を始めた。
組織にしたのは、助成金などを活用し、資金面などの課題をクリアする狙いもある。同委顧問の岩井義照さんは「行政に頼ってばかりではだめ。今の時代、公の役割と地域の役割それぞれがある。自発的・主体的に活動できる環境が必要と考え立ち上げた」と設立背景を説明した。
同委には、一般住民、町議、区長など多種多様な集落住民が集い、現在、定例会などで議論を重ねている。外からはアドバイザーやブレーンも招き、アイデアの咀嚼=そしゃく=・反芻=すう=を繰り返し、企画を練る。
同委はこれまでに、集落の歴史・史跡を知るフィールド調査や勉強会、資源の掘り起こしに向けた「集落マップ作成」、国道を彩る「花いっぱい運動」などを実施。最近では、地元の住民が率先して地域を学ぼうと、阿木名の賢人「重野安繹」を知るための学習会を関係団体と連携しスタートさせるなど、先を見据えた土台づくりに努めている。
また、同委のユニークなところはその組織形態にもあり、議題の決定機関に「阿木名集落会」を据え、その活動の是非を住民の総意に委ねている。この他、教育文化、農林水産、観光・地域開発など6班22人の委員を委嘱し、情報収集のみならず、住民への丁寧な広報・周知活動も怠らない。
集落住民に、同委について尋ねると「次は何するの」など反応は上々。広い範囲で意識の醸成・認知の輪が広がっている。
岩井さんは同委の活動について「地域課題の解決につながる活動を提案して経済効果につなげて行くこと」と話す。同委事務局長の碩悟さんも「運営ノウハウを蓄積し若い世代につなぐことで、さらに地域の魅力を打ち出す力が身につくはず」と話し、次の世代が引き継ぐための基盤づくりにいそしむ。
同委の運営方法は、複数の主体が何らかの目標を共有しともに力を合わせて活動する「協働」「共創」などの考え方に似ている。企業や団体などの支え合う主体が「集落住民の一人一人」に置き換わった形だ。
さまざまな体験の中にはすぐ忘れるものもあるが、後々まで強く影響を及ぼし、世の中を動かすきっかけとなるようなものもある。同委には集落住民を駆り立て、うねりをつくり出すような仕掛けがいくつか存在し、人が集まってくる。
岩井さんに「未来図の具体的なアプローチは」と尋ねると、「今は内緒」とのことだが、立ち上げ当初から構想する幾つかの大きなテーマも進行中とのこと。住民一人一人が持つポテンシャルを引き出し、最大化していくための方法論はそれが具体化した時に見えてくるはずだ。
しばらくは成り行きを見守ることになるが、今後に注目しながら、新しい時代の集落活性化モデルが、この阿木名から生まれてくることを期待したい。(青木良貴)