管理型観光やルール必要

持続的観光推進をテーマにパネルディスカッション


講演を行ったアルトゥロ所長

ダーウィン研究所長講演 先進地ガラパゴスに学ぶ
「奄美の普遍的価値強調を」

 県自然保護課は11日、奄美市名瀬のホテルで講演会「世界自然遺産の保全と活用~ガラパゴスと奄美~」を開いた。世界自然遺産先進地のガラパゴスから講師を招へいし、ガラパゴスの現況や奄美へのアドバイス等が語られ、有識者と講師を交えパネルディスカッションも実施。奄美の登録に向け、管理型観光やOUV(顕著な普遍的価値)に責任を持つことなどが提言された。

 講演会は今夏の遺産登録に向け地域における機運醸成や、遺産の保全・活用について理解促進を図る目的。講演に先立ち、日本ガラパゴスの会の奥野玉紀事務局長が、ゾーニングやナチュラリストガイド(国家資格)制度、観光船の管理、検疫など保全管理体制を説明した。

 チャールズ・ダーウィン研究所のアルトゥロ・イスリエータ所長を講師に逐語通訳しながら、「世界自然遺産登録以降のガラパゴスの歩み」の演題で、世界自然遺産の登録やガラパゴスでの課題などを解説。ガラパゴス諸島の成り立ちや、自然環境の特色など英国人作成の動画で紹介した。

 「約350万年前に火山活動で誕生し、1535年にヨーロッパ人司教が発見。1835年に科学者ダーウィンが調査に訪れた」と説明。1959年に陸域約97%を国立公園に指定し、78年に世界自然遺産第1号に登録された。

 講師は「ユネスコに世界遺産として登録されるにはOUVを有する必要がある。世界自然遺産になるために四つの基準があり、ガラパゴスは全て満たしている」と語った。

 また課題として、「観光客が増えたことで外来種が増えたり、人口増で観光業界や漁業関係者からの圧力などがあること」を指摘。研究所はエクアドル政府と25年間の協定を結び、科学的根拠を示して助言を行うとし「これまで40年間に渡り情報提供してきたので、現在では環境省主導で保護活動が行われている」。

 講師は登録を目指す奄美に向け「奄美のOUVを強調していくことが大事でないか」と助言。「外来種を入れない対策や科学的アプローチなどにコストが必要。財団のようなものを設立し共同で取り組んでみる」などと話した。

 休憩後に、講師を交え4人の有識者が登壇しパネルディスカッション。コーディネーターを鹿児島大学の星野一昭特任教授が務め、「奄美群島の持続的観光推進のために」のテーマで意見が交わされた。

 東京大学医科学研究所の服部正策特任研究員は、ガラパゴスの生物の進化過程や奄美が外来種の侵入など今後気をつける点など質問。講師からは「島として成立の時期が近く、似た環境と考えられるが進化は違う」「奄美の中核的な自然はほとんど独特なものだろう。それをどうやって守り普遍性を出していくことが大事だろう」と語った。

 県自然保護課の羽井佐幸宏課長は、利用の観点からガラパゴスの自然公園管理計画や社会生態系の概念などを講師に質問。「観光客の管理が重要になる。外来植物の侵入には植物検疫を実施。住民や観光客が守るべきルールづくり必要だろう」と答えた。

 奄美市産業創出プロデューサーの勝眞一郎氏は、住民への教育などを質問。講師は「一般への教育は時間が20~30年かかるだろう。住民の行動を変えるのは大変だが、市町村段階でのアプローチが大切」と話した。

 会場からの質疑応答の後、講師から「奄美が世界自然遺産になるために、手助けをしたい。情報提供なども行いたい。奄美の若者を素晴らしい自然に連れて行ってもらいたい」とアドバイス。星野特任教授は「国、県、市町村の様々な取り組みで世界自然遺産登録まであと僅かとなった。実現したらOUVを守っていくことが責務となる。持続的な観光が実現できれば奄美モデルを世界に発信しPRできる」と総括した。