世界自然遺産登録に向け、奄美と沖縄で連携し適正利用など意見を交わした世界自然遺産候補地地域連絡会議(26日、那覇市)
環境省と林野庁、鹿児島県と沖縄県は26日、那覇市の県教職員共済会館「八汐荘」屋良ホールで2017年度「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産候補地地域連絡会議」を開いた。やんばるの国頭村、大宜見村の村長はじめ奄美大島(2町1村)、徳之島(3町)と沖縄の4町村合わせて10町村の担当者15人と国・県関係者など約40人が参加、世界自然遺産候補地の適正な管理や、登録に向けた関係行政機関の取り組みなど意見を交わし、登録に向け連携強化と遺産登録後の適正な管理などに取り組むとした。
開会で環境省那覇自然環境事務所の東岡礼治所長と林野庁九州森林管理局の林視部長があいさつ。東岡所長は、「地域連絡会議は前年度に設置。地域連絡会議に参画する17の行政機関が連携し、一丸となって地域住民の協力を得ながら、よりよい遺産の管理体制と取り組みが進められるように環境省としても努力していく」と語った。林部長は、「米軍から国頭村に4千㌶の返還があり、4分の3にあたる3700㌶を保護地域に指定できた。森林の具体的な管理計画を作成し、生態系保護と利用を通じた地域振興に努めたい」とした。
議事では、▽世界自然遺産登録に向けた動き▽地域部会などからの報告―を事務局の説明後に質疑。昨年10月に実施されたIUCN現地視察の結果概要も発表された。
オブザーバーで地域連絡会議に出席した琉球大学名誉教授の土屋誠科学委員会委員長が、IUCN現地視察の感想を報告。「全日程に同行し、IUCNの委員に推薦地の大切さなど訴えてきた。科学的見地から推薦地の登録基準(クライテリア)を説明し、理解してもらえたという印象を持った。また登録後の琉球列島の保護管理の重要性の認識も共有できた」と説明した。
地域部会からの報告について、鹿児島県と沖縄県の自然保護部局の担当者が発表。鹿児島県自然保護課奄美世界自然遺産登録推進室の大西千代子室長は、世界自然遺産奄美トレイル事業と利用適正化事業の概要を紹介した。
沖縄県自然保護課の金城賢課長は住民アンケート調査の結果と、推薦地の適正利用とエコツーリズム取り組み状況など報告。「アンケートの回収率の低さから、さらに普及啓発活動が必要。やんばるや西表島では、エコツーリズムの推進全体構想やガイドラインを新年度に作成する」などと話した。
東岡所長は両地域部会の報告から、共通点として自然遺産になると利用者が増えることから、推薦地の適正利用の取り組みが進められていることなどを指摘。大宜見村の宮城功光村長は、「やんばるの自然林の中に再生エネルギー関連で太陽光発電パネルが設置されつつある。村条例で届け出を義務付けているが、規制は難しいものがある。経済産業省と調整し、ある程度の規制は必要でないか」との意見を述べた。
また6月24日から開催される第42回ユネスコ世界遺産委員会に関して、両県はパブリックビューイング計画を発表。大西室長は「鹿児島県では、奄美大島、徳之島、鹿児島市の3会場で実施する」とした。
沖縄県自然保護課の金城課長は、「やんばるでノネコ捕獲は16年度に開始し、希少種保護に取り組んでいる」と説明。世界自然遺産登録に向け「住民の期待や懸念を踏まえた上で、自然環境保全などの取り組みを着実に実施し、その具体的な取り組み内容や成果について情報発信を行う必要がある」とした。