空き家バンク制度

奄美市の「空き家バンク」に登録された一戸建て物件(市ホームページより)

奄美では8自治体導入
移住希望者が増加傾向 「紹介物件足りない」

 空き家物件を活用した定住促進事業として、「空き家バンク」制度を取り入れる自治体が全国的に増えている。奄美群島では奄美市など8自治体が導入しているが、移住者を受け入れる空き家物件は不足傾向が続いている。近年の入込増を背景に、移住希望のIターン者には地域の住宅情報も提供する自治体も出てきた。

 今夏を目指す世界自然遺産登録や格安航空会社(LCC)就航など、奄美への交流人口の増加が期待されている。空き家紹介は定住促進の強化と合わせ、自治体側の廃屋化の抑止にもつなげたいという意向もあり、自治体担当者は、優良物件の確保を積極的に努める。

 定住促進の一環として同バンク制度を導入する自治体は県ホームページ(HP)によると県内で32。奄美では奄美市、瀬戸内町、龍郷町、天城町、伊仙町、和泊町、知名町、与論町となっている。

 奄美市は3年前、群島の他自治体に先駆け、県宅地建物取引業協会・奄美支部(西和博支部長)と連携。物件の登録・管理を行う同制度をスタートした。I・Uターン者向け定住支援の一環としてHP上で市営住宅の提供や登録物件を公開し、紹介から契約までの仲介役を担う。

 同市バンク制度の登録実績は、2015年度1件、16年度8件、17年度2件。ほとんどが賃貸物件だが、生活基盤が島外となった元市民が家屋登録するケースも増えてきた。HPの問い合わせは全国からあり、同市プロジェクト推進課によると「北海道、秋田など北日本エリアからの問い合わせも増えた」。

 同制度を通じた他自治体の17年度実績によると、瀬戸内町は、加計呂麻島島内の売買物件1件。不動産業界を通さず、町単独でオーナーに紹介。「加計呂麻島の認知度が高まった、数年前から問い合わせは一定数ある」(同町企画課)。

 徳之島の伊仙町は17年度から、リフォーム助成事業を活用した賃貸物件の空き家バンク登録を開始したところ、前年度実績(登録5件)から大幅に伸び、合計登録件数14件のうち10件でリフォーム事業を実施。契約成立件数5件と好調だ。

 同町未来創生課によると、島内他2町住民の入居もOKとなるため「紹介物件の関心は高い」。なおリフォーム助成事業の18年度実施は未定だが「賃貸物件へのニーズに対し、紹介数は少ない。町内物件の需要は高い」としており、対応を検討している。

 沖永良部島の知名町は実績2件(紹介数賃貸4、売買1)。地域関係者と連携した物件の掘り起こしに尽力。やはり賃貸への需要に対し、物件数が少ない傾向を強調した。

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 奄美市内の不動産業関係者によると、メディアが奄美を取り上げ、移住機運が高まり始めたころから、関東など都市圏から問い合わせは増えてきたという。しかし、好物件の「空き家」は地元の段階で契約がまとまるケースが多く、移住者向け物件は相対的に少ない。

 同市プロジェクト推進課は物件の問い合わせの際、希望すれば物件情報として新聞広告などを提供。今後について「需要と供給のバランスを考慮しながら、関係機関と受入態勢をさらに構築したい」と意気込む。