西郷ゆかりの「報恩丸」レプリカ船修理

補修作業中の「報恩丸」と船大工の越来勇喜さん(奥)=和泊町=

沖縄から船大工来島
和泊町西郷南洲記念館

  【沖永良部】和泊町西郷南洲記念館にあるレプリカの木造マーラン船「報恩丸」の補修作業が先月22、23日、同記念館で行われた。作業は、越来造船(沖縄県うるま市)の船大工、越来勇喜さん(36)が担当。館内展示による乾燥で船体にできた隙間や、船に取り付けられているぎ装を直した。

 レプリカ船の大きさは全長2㍍30㌢、幅60㌢。記念館が開館した2011年製造。うるま市の「無形民俗文化財(マーラン船技術保持者)」に指定されている唯一の船大工で越来さんの父、治喜さん(63)が手掛けた。伝統的な造船技術を用いて作られており、海に浮かべることも出来るという。

 今回、補修のために越来さんら3人が来島。船についたほこりを取りながら、部品一つ一つをチェックしていった。

 越来さんは「本物のマーラン船と作りは同じ。模型でも貴重。本来は赤と黒で塗装するが、この船には塗っていないので技術の高さを間近で見ることが出来る。西郷さんの歴史と一緒に、ぜひ船も見てもらいたい」と話した。

 「報恩丸」は、沖永良部で遠島生活を送っていた西郷隆盛が、薩英戦争の勃発による薩摩藩の危機を知り、島役人の土持政照に作らせた船。西郷は、この船で島抜けを決意していたが、イギリス艦隊が退いたことで戦争が終わり、島抜けは中止となった。船の全長は16~20㍍と推定。船名には「島民の恩義に報いる」の意味が込められている。