世界自然遺産 奄美・沖縄登録延期

世界自然遺産 奄美・沖縄登録延期

利用調整のルールづくりなどもIUCNから指摘された(金作原で2月に行われた実証実験)

IUCN勧告
環境省、評価結果分析し地元と対応
推薦書再提出、審査は数年後

環境省は4日、ユネスコの諮問機関であるIUCNが「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録について評価結果を勧告し、推薦書の見直しを求める「登録(記載)延期」だったと発表した。来月の世界遺産委員会の審議を待たなければならないが、今夏の登録は見送られる可能性が高まった。環境省は評価結果を分析し、関係機関や地元団体などと指摘事項等に対応するとした。

 

日本政府は2017年2月、ユネスコ世界遺産センターへ推薦書を提出し、同10月にIUCNの専門家が現地調査を実施。18年2月、政府がIUCNからの追加情報要請に対し回答を行っていた。

これまで日本国内の世界自然遺産候補地で、「登録」以外の勧告が出たのは初めてのことになる。最終的な登録可否決定は6月24日~7月4日にかけて、中東バーレーンで開催の世界遺産委員会で世界遺産条約加盟国から選出された代表21国の審議を経て決定される。今夏の登録は見送られる公算が大きくなった。

登録延期の勧告を受けた場合、登録に向けて推薦書の抜本的な見直しや、再提出後に再びIUCNの現地調査や審議などが必要となる。このことから登録までは、数年を要し厳しい状況になるという。

IUCNは自然遺産の登録基準について、遺産候補地が分断されていることや沖縄島北部訓練場の返還地が追加されていない点などで、推薦地の選定や連続性の再考を指摘。奄美に関しては、ノネコ管理計画の策定やマングース駆除事業などの取り組みが評価されたが、推薦地の生物多様性に負の影響を及ぼす侵略的外来種の対象を拡大することや、観光地の適切な利用調整などが求められている。

環境省自然環境計画課の松永暁道専門官は、「登録延期の結果を重く受け止め評価結果を詳細に分析する。仮に誤っている箇所などあれば正したい」と語った。

県奄美世界自然遺産登録推進室は、「今後、政府の対応が検討されると考えており、国の要請に基づき対応をしていく」とコメントした。

奄美・沖縄の推薦地は、北緯24度~30度に位置する亜熱帯の島嶼地域。この地域では、大陸と分離・結合を繰り返した複雑な地史を反映した独自の生物進化がみられ希少種が多く見られる地域でもある。アマミノクロウサギなどIUCNレッドリストに掲載されている絶滅危惧種88種も含まれていて、推薦地が生物多様性の保全上重要な地域で自然遺産の価値でないかとされていた。

また日本政府に4日入った連絡によると、長崎、熊本県の文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」について、ユネスコの諮問機関イコモスは世界遺産登録をユネスコに勧告した。文化遺産として登録されると、国内で18件目になる。来月の世界遺産委員会で、正式決定される見通しとなった。文化庁は16年の登録を目指して推薦していたが、イコモスから内容の見直しを求められ16年2月にいったん推薦を取り下げ。その後イコモスの助言を得ながら内容を練り直し17年に再推薦していた。