世界自然遺産 推薦取下げ決定

鹿児島・沖縄両県のイベント影響
再提出、確実な登録目指す

 政府は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産推薦に関し1日、閣議で国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)に申請していた推薦書をいったん取り下げることを了解した。環境省は推薦書を修正し再提出する方針を明らかにしており、来年2月1日までの推薦書の再提出と、確実な登録を目指すとしている。鹿児島県と沖縄県では今月24日からの世界遺産委員会の審議を見送ったことにより、登録記念などのイベント開催に影響が出ている。

 ユネスコの諮問機関IUCN(国際自然保護連合)は先月4日、奄美・沖縄の世界自然遺産登録について「登録延期」を勧告し推薦内容の見直しを求めていた。これに対し環境省は評価結果の分析や、確実かつ早期の登録を目指し地元自治体の意見を聞くなどして検討を続けた結果、先月29日に推薦書をいったん取り下げ再提出する考えを示していた。

 この考えに地元などから特に反対はなく政府は、1日の閣議で今夏の世界遺産員会での審議を受けず、登録に向け再スタートするため推薦書を取り下げることを了解した。同省は今後の方針について、「IUCNの評価には登録に向けた明確な道筋が示されており、確実な登録を実現するためには、早期に推薦書を再提出し再審査を受けることが最適で早道であると判断した」と説明している。

 同省は、「関係者としっかり連携しIUCNのアドバイスを求めるなど、登録に向けた再スタートを切り、2019年2月1日までの推薦書の再提出と、確実な登録を目指す」ことを表明。来年2月1日までに推薦書を修正して再提出した場合、IUCNの現地調査、勧告などが行われ、世界遺産委員会での登録審査は20年になる。

 今回の閣議決定を受け、鹿児島・沖縄両県の世界自然遺産登録に関するイベントが見直しや変更など影響が出ている。鹿県の奄美世界自然遺産登録推進室の大西千代子室長は、「世界遺産委員会のパブリックビューイングや登録記念イベントを予定していたが、取り止めの方向で調整することになる。世界自然遺産シンポジウムは未定だが、継続事業は予定通りに実施する」と説明。沖縄県の世界自然遺産推進室の東江二男さんは、「鹿児島県との連携事業や、地元の祝賀会、記念グッズ作成など残念だが中止になる」と話した。

 筑波大学の吉田正人教授(世界遺産学)は今回の推薦書を取り下げて再提出するとした閣議決定を、「前向きにとらえて、良い推薦書にして提出してもらいたい」と肯定。来年からは1国から世界遺産委員会に一つしか推薦できないことにふれ、「文化遺産との調整もあるかもだが、地元も落胆することでなく再提出までの期間は、IUCNから指摘された観光対策や外来種対策などに時間が与えられたと思い取り組むべきだろう。登録実現後もクライテリア(登録基準)である自然の価値を保護していくことが重要になる」と語った。