推薦取り下げ決定受け関係者受け止め

今回の推薦取り下げを受け、引き続き各関係機関、団体等との連携した取り組みの重要性が示された(資料写真)

「次回推薦までの準備期間に」
「地元の機運醸成を重要視」

 1日、世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」のユネスコへの推薦をいったん取り下げることが閣議決定された。今回の推薦取り下げについて、関係者からは、残念がる声がある一方で、ユネスコの諮問機関であるIUCNの、登録延期勧告で、奄美の自然の価値を再認識するとともに、課題が示されたことを有意義とし、次回の推薦までの準備期間ととらえ、引き続き関係機関・団体などとの連携した取り組み、住民含めた地元の機運醸成などを重要視する意見が聞かれた。

 鹿児島県では、2017年4月に自然保護課内に「奄美世界自然遺産登録推進室」を設置し、取り組みを進めてきた。三反園訓知事は決定を受け「推薦区域の見直しをすることで、登録の可能性は十分あるとされている。これまで実施してきた世界自然遺産の価値の維持のための取り組みを一層推進し、早期登録がなされるよう引き続き全力で取り組んでいく」とコメントを出した。

 奄美群島広域事務組合管理者の朝山毅奄美市長は「大変残念だが、世界自然遺産としての価値は認められ、登録を確実にするためのアドバイス的な内容も含まれ、全く悲観することではないと思っている。期間延長を更なる課題の解決など与えられた有益な期間として、引き続き国、県、地元市町村、関係者と連携しながら取り組んでいきたい」。大島郡町村会会長の伊集院幼大和村長は「今夏の登録が叶わず残念に思った一方で、早期実現に向けた再出発と位置付けることができると考えている。奄美群島一体となり、国、沖縄・鹿児島両県、関係市町村、地域住民の理解・協力を得ながら、引き続き普遍的価値の保全活用に必要な対策を検討していきたい」とそれぞれコメントを寄せた。

 他の関係団体からも近い意見が。一般社団法人奄美群島観光物産協会・松元英雄統括リーダーは「残念な思いの一方で、まだまだやらなくてはいけないことがたくさんあると感じる部分もあったので『ホッ』とする気持ちもある。取り組めるところは取り組んでいかなくてはいけないだろう」と語った。

 自然関係の団体からも、次回推薦までの貴重な期間とする意見が聞かれたなか、自然と直接関わっている立場だからこそ、保全・活用に向けた各課題を強調する声も。NPO法人徳之島虹の会の美延睦美事務局長は「IUCNが仕切り直しの機会を与えてくれたと思う。管理計画などしっかり立てなければいけない。地元の機運醸成もまだまだ高めていかなくては。今度こそは確実に登録となるよう、国、県、地元の連携共同で取り組んでいかなくてはいけない」と呼びかける。

 また、自然写真家の常田守さんは「IUCNは世界自然遺産登録の方向性を示してくれた。推薦書の再提出に向かって取り組んでいくしかない。保護体制の準備や、ガイドの質の向上などの準備期間としてもらいたい。住民も勉強して、いい方向にもっていければと考える」。

 奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は「修正すべき点はIUCNの勧告に出ている。保護管理や利用調整のルール化、法制化など国などは方針を示さなければならないだろう。外来種の対策も徹底しなければならない」などと話すなど、関係者は各ルール、体制構築の重要性も訴えた。