ACN、朝日中で出前授業

出前授業で奄美の自然や、世界自然遺産登録の延期などを講義した鳥飼さん

自然が守られる「より良い奄美大島へ」
奄美の自然や飼い猫適正飼養学ぶ

 奄美ネコ問題ネットワーク(ACN、久野優子代表)は7日、奄美市名瀬の朝日中学校(今村典盟校長)でノネコ問題や奄美の自然などに関する環境学習の出前授業を行った。生徒に奄美大島の固有種や自然の貴重さ、外来種問題、ノネコの脅威などについて講義。森の中の生きもののつながりやノネコを増やさないためにノラネコのTNRや、飼い猫の適正飼養について理解を深めた。

 出前授業の講師を久野代表と副代表の鳥飼久裕さん(奄美野鳥の会会長)が担当。ACNが自然環境保護団体のWWFジャパンやトヨタ自動車㈱の助成を受けて、同校1年生92人を対象にして出前授業が行われた。

 授業の前半部は、鳥飼さんが奄美の森や自然に関してスライド資料で説明。森の生きもののつながりの例として、アマミノクロウサギとそのフンを食べる昆虫を紹介して「クロウサギが絶滅すると、フンを食べる昆虫も絶滅してしまう」と話した。

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録に関して、IUCN(国際自然保護連合)が「延期」と判断したことも解説。「生きものの生息地が細かく分かれすぎている点や、観光客がたくさん来た時の対策、外来種対策の不十分さが理由」とした。

 特定外来生物のマングースが過去に人の手で持ち込まれ、たくさん増えて奄美の生きものに悪影響が出たことを例示。マングースバスターズの活躍で減少したが、「ノネコ(山で自活する猫)が、奄美で新たな外来種の問題を引き起こしている」と語った。

 出前授業の後半部は久野代表にバトンタッチして、猫の生態や飼い猫の適正飼養などを講話。スライド資料や動画などで、猫の身体的特徴を説明。「ノネコは森の中で奄美の固有種や希少種を襲うなど、ノラネコは家の周りにフンやおしっこを勝手にしたり、ノラネコ同士でけんかするなどの問題がある」と説明した。

 猫が不幸にならないように、飼い猫の適正飼養を呼び掛け。奄美大島の5市町村の飼い猫の適正飼養に関する条例に触れて猫を飼う場合は、▽市役所、役場などに登録する▽飼い主が誰か分かるようにする▽繁殖制限(不妊手術)をする▽室内で安全に飼う▽猫を捨てたり虐待しない―点を守るように訴えた。

 ノラネコを増やさない取り組みのTNR(わなで捕まえ不妊手術して放す)事業も紹介。「耳が一部カットされているノラネコがTNRの証拠。そうでないノラネコがいたら、市役所か奄美猫部に連絡して」と話した。

 ネコ問題の解決に向け、よく考えて島外から持ち込む生きものを管理するなどアドバイス。「自然が守られるより良い社会、より良い奄美大島を目指そう」「猫の飼い方に対する住民の意識が変わらないと、世界自然遺産も登録にならないのでないか」と出前授業をまとめた。

 生徒を代表して前田真慧=みさと=さんが、両講師にお礼の言葉を発表。「新しく学んだことを生かして、奄美の環境について考えて生きものを大切にしていきたい」と語った。

 ACNは、17年度から児童生徒に対する環境学習の出前授業に積極的に取り組んでいる。今年度は奄美市以外の町村での実施も予定している。