侵略的外来種として生態系への深刻な被害のほか、農作物被害も報告されている「ツルヒヨドリ」(環境省提供写真)
6月定例県議会は14日、引き続き一般質問(最終)があり、山田国治=自民党、霧島市・姶良郡区=、大久保博文=自民党、鹿屋市・垂水市区=、禧久伸一郎=自民党、大島郡区=、外薗勝蔵=自民党、薩摩川内市=の4議員が登壇。禧久議員が取り上げた特定外来生物ツルヒヨドリについて県当局は、環境省の調査結果により奄美市をはじめ4市町村8カ所で生育が確認され、現在のところ奄美大島以外の島では確認されていないことが報告された。
藤本徳昭環境林務部長の答弁によると、ツルヒヨドリは中南米の熱帯地域を原産とする植物で、国内では1984年に沖縄県(うるま市)で初めて発見された。環境省が昨年とりまとめた調査結果では、20年ほど前に奄美大島に侵入したとの情報があり、島内各地で確認されるようになったのは数年前からとされている。生育が確認された奄美大島では、現在も龍郷町では確認されていない。
侵入経路について藤本部長は「生育環境のほとんどが道路ののり面であることから、のり面の緑化資材に混入して持ち込まれた可能性が高いとされている。環境省は昨年度で生育地の防除作業、防除後のモニタリング調査もしている」と述べ、こうした外来種の世界自然遺産登録への影響については「IUCNの勧告では、根絶に近づいているマングース対策や奄美大島のノネコ管理計画策定などの取り組みは評価される一方、地域の固有種等に影響を与えるその他の外来種についても対策を拡大することを求めている」とした。
今年度、奄美群島振興交付金を活用し新しいメニューとして設けられたリーディング・プロジェクト推進枠事業に関する質問もあった。同事業は市町村自ら創意工夫と他の自治体や民間との連携により、地域特性を踏まえた施策を具体的に事業化することが目的。事業費の負担割合は国10分の5、県10分の1、市町村10分の4となっている。
毎年度取り組むテーマを設定するが、古薗宏明企画部長の答弁によると、今年度は▽奄美らしい観光スタイルの構築=民泊事業者の育成、体験型プログラムの提供、旅行商品の造成、郷土食をテーマとしたイベントなど8事業選定▽世界自然遺産ロード構築に向けた戦略的交流促進=沖縄県北部地域との広域的交流など3事業選定▽スポーツイベントなど奄美の特性を生かした産業振興=スポーツ合宿のためのトレーニング環境の整備、各種大会の誘致活動など4事業選定―の三つのテーマを設定している。
サトウキビ振興ではセーフティネット基金の運用改善、収入保険制度の概要に関する質問があった。本田勝規農政部長は「セーフティネット基金の運用改善により、新たに収穫開始から1カ月間の平均買入糖度が11・5度を下回った場合も基金が発動されることになった。低糖度発動要件は2017年産から運用されており種子島、喜界島、徳之島で種苗確保対策やメイチュウ防除対策などが実施されている」と説明。収入保険制度は対象作物を限定せず農業経営全体の収入減少を補てんする仕組み。今年10月から加入申請が始まるが、青色申告者を対象に補償金は当年の収入が補償限度額を下回った場合、下回った額の9割を上限に補償する。サトウキビは、農業共済制度との選択加入となる。
75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度に関し2年ごとに行われる保険料率の見直しに関する質問もあった。中山清美くらし保健福祉部長の答弁によると、今年2月に県後期高齢者医療広域連合が決定した保険料率による4月からの県内被保険者1人あたりの平均月額保険料は昨年度と比べ1・7%71円増の1320円となる見込み。全国平均の1・2%72円増の月額5857円を下回っている。鹿児島県の状況は九州管内で2番目、全国でも10番目に低い保険料額。