世界自然遺産候補地連絡会議

世界自然遺産候補地連絡会議

世界自然遺産登録に向け、区域修正や観光客の管理などに意見を交わした世界自然遺産候補地地域連絡会議

機運下げず早期確実登録へ
推薦書再提出 来年2月を懸念する意見も

環境省と林野庁、鹿児島県と沖縄県は27日、奄美市名瀬のAiAiひろばで2018年度第1回奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地地域連絡会議を開いた。登録延期と勧告されたIUCN(国際自然保護連合)の評価結果と課題への対応方針などと、今後の登録を見据えたスケジュールについて意見を交わし、住民の機運を下げずに早期に確実な登録実現を目指すことを確認。沖縄の首長から、来年2月の推薦書提出のスケジュールは「拙速に過ぎないか」と懸念する声も聞かれた。

開会で環境省自然環境計画課の奥田直久課長と林野庁九州森林管理局計画保全部の井口真輝部長があいさつ。奥田課長は「IUCN勧告は想定外で残念な結果。推薦地の区域を見直せば大丈夫だろう。地域の協力を絶やすことなく、地域の皆さんと2年後の登録を成し遂げたい」と語った。井口部長は、「各市町村を回って印象に残ったのは、登録に向けて十分な時間が得られたという前向きな発言をしていた点。今後も登録に向けて地元の皆さんと取り組んでいきたい」とした。

次に奄美・琉球の世界自然遺産候補地の科学委員会委員長で琉球大学の土屋誠名誉教授が「世界自然遺産と琉球列島の自然」の題で講演。スライド資料で日本の世界自然遺産登録の経緯や、遺産候補地の概要などが解説された。

土屋委員長は「世界自然遺産については、地域の自然、日本の自然、世界の自然について考えること。登録が実現したら自然に恩返しをする機会」と位置付け。「世界自然遺産は登録地のみを保全することが目的ではない。登録されなかったといって、顕著な普遍的価値を有しないという意味に解釈してはならない」と語った。

議事では、▽IUCN評価結果及び課題への対応方針▽今後のスケジュール―を事務局(環境省)の説明後に質疑。来年2月1日までに、推薦書を再提出する場合の最短のスケジュールも示された。

IUCNが指摘した推薦区域の修正は、推薦地と緩衝地帯の境界を再度精査し、地域関係者との調整など実施して対応。奄美大島の200㌶以下の7区域の連続性確保や、徳之島の南北に分断された推薦区域の接続性に向けた検討を行うと説明した。

今後のスケジュールで、9月末に暫定版の世界遺産推薦書をユネスコに提出し、正式な推薦書を期限までに再提出してIUCNの現地視察や審査に臨む流れを説明。事務局が「タイミング逃すことなく取り組んで行く」とした点に、沖縄県竹富町の西大舛=にしおおます=髙旬町長は「来年2月1日で大丈夫なのか。課題は多い。拙速に過ぎないか。ゆとりを持って取り組んではどうか」と懸念を示した。

出席した各自治体の首長からは、「早期の登録に向け、国や県などと連携し取り組んで行く」「登録まで期間が長くなると、住民の機運が下がるのでないか」といった意見が出された。奥田課長は「推薦区域を早急に決定したい。2月までにできることをきちんと整理して取り組んで、4島での合意形成ができない時は推薦しないこともあり得るのでないか」とした。

会議終了後に、奥田課長は報道陣の取材に対応。「スケジュールがタイトなどと言うのは、自治体それぞれの意見。最短かつ確実な登録を目指す。各島の部会で議論を深めて課題解決して推薦書にまとめたい」「推薦区域の修正が最大の課題と認識する。利用のためのコントロールや外来種対策なども重要な課題」などと話した。