平成最後の夏 記憶の継承 それぞれの活動=2=

18年度名瀬公民館生涯学習講座の一つ「復帰周年と明治150年の奄美を学ぶ」講座の様子

各団体らが発行した復帰運動関連の冊子

復帰運動学び、次代へ
生涯学習講座 10年前開始集落巡回も

 奄美市名瀬公民館生涯学習講座の中に「奄美群島の日本復帰運動に学ぶ」を中心テーマにした講座がある。2008(平成20)年度の10年前に開始、途中休講した年度もあるが、18年度も6月に開講し、講座生が学び続けている。講師は元市役所職員の花井恒三さん(70)=奄美市名瀬在住=が務める。復帰運動や太平洋戦争時代を知る人々をゲスト講師に招き、学んでいく形を取りながら継続してきた。花井講師によると、名瀬公民館金久分館を会場とする講座が中心だったが、3年目から奄美大島の市町村の各集落巡回講座を併行実施した。集落民から昔の話などを聞き学んだ。

 「復帰運動に学ぶ講座」を始めたきっかけは、07(平成19)年12月に「奄美群島の日本復帰運動を伝承する会」が発足したとき、今後どのような伝承活動をしていくか議論した際、名瀬公民館生涯学習講座に目を付け、翌08年度から講座開設に至った。

 毎年度6月開講し、翌年1月まで開催。月2回講座を開き、各年度計16回学ぶ。8年間で合計120回以上開催。初年度の08年度講座生数は40人。18年度は21人。

 復帰運動関連テーマは①奄美群島復帰を学ぶ②奄美復帰と薩摩侵攻400年に学ぶ③奄美復帰と先史先人に学ぶ④奄美復帰と先人に学ぶ⑤奄美復帰・UIOターン⑥奄美復帰60周年に学ぶ⑦戦後70年・戦時中の奄美を学ぶ⑧復帰65周年と明治150年の奄美を学ぶ(18年度)。別テーマを併せて学んだ年度もある。

 復帰運動の語り部は、両親や家族、親族、知人らを通じて何らかの形で戦争時代を知っている人が多いという。花井講師がまとめたゲスト講師候補一覧には、80歳代を中心に52人の氏名、戦時中の体験談などの概要を記す。90歳代のゲスト講師候補もいる。

 金久分館会場では、ゲスト講師と別に、復帰の頃の▽市役所▽学校▽女子校▽安陵会(大島中、大島高)▽中学生時代―の関係者を招き、職場別や学校別に座談会を催した。合同座談会も開催。

 花井講師によると、「当初は名瀬地区の話題が中心となり、講座出席者が減少していき、2年間で限界が見えてきた」。そこで3年目から方針変更し、金久分館での講座と併行して奄美大島の各集落を巡って講座を開くことにした。名瀬の旧三方地区を皮切りに、笠利、龍郷、住用地区の集落を巡り、集落公民館などで講座を開いた。区長を通じ、集落民に参加を呼び掛け、集落民の戦争時代の体験や復帰運動体験など話してもらった。各集落で対応が異なり、全集落開催はできなかった。多い集落では40人以上集まったが、少ない集落は数人だった。

 大和村、宇検村、瀬戸内町では、中心地にある公民館で講座を開いた。

 1回目から受講している講座生は、石神京子さん、岡登美江さん、岡山頼子さん、下柳田美香さん、園田靖美さん、安田綾子さん。

 花井講師は「複眼的に復帰運動の〝辞書〟を引く力をつけてほしい」と述べ、①泉芳朗執行部②民主勢力③全国奄美連合④米国(軍政府)⑤奄美群島政府⑥群島民、高校生、小中学生の眼⑦メディアの力⑧奄美と沖縄の共通点・相違点―の八つの眼の視点で見ることが必要だと指摘。さらに「今後の復帰70周年以降の行事開催に向け、どのように継承していくかが課題」「80歳代の人々らが当時の事を話したい、との動きも出ている」「世界に誇る民族無血の奄美復帰運動を〝世界記憶遺産〟へとつなげてほしい」と期待を込めた。

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 花井講師は、あまみエフエムや奄美テレビに出演し、記録をCDやDVDに保存。また、地元新聞への連載等を通じて復帰運動に学ぶ重要性を訴えている。

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 復帰後、節目の年などに各種団体・個人が復帰運動関連冊子や本などを製作し、伝承に活用してきた。