作品を説明する雪山さん。展覧会には数社が関わるという額縁だが、これは、偶然にも雪山さんの会社のものだとか
墨に思い込めた「釈迦の横顔」
徳之島出身の雪山渥美さん
【東京】徳之島出身で埼玉県川口市在住の雪山渥美さんがこのほど、「第2回日美展」(主催・公益財団法人国際文化カレッジ)の水墨画部門で入選(秀作)を果たした。見事に結果を出した雪山さんは、「今度はもっと上の賞を目指したい」と創作意欲を燃やしている。
墨に思いを込めて描かれた雪山さんの作品は、「釈迦の横顔」。3回書き直し、およそ3カ月をかけた力作で、慈愛に満ちた表情が印象的だ。
額縁を製造する会社を経営していた雪山さんは、各展覧会や美術展に納める何社かのメーカーの一つだった。展覧会に出向き、仕事として自社の製品を確認するうち「額の中身も描いてみたくなった」と50歳を過ぎた頃に決意したという。
ある先生に師事し、才能が開花。日美展の前身である1996年に始まった「総合水墨画展」でも入賞しているが、同展には初の入選だ。
受賞作はある仏像の絵を参考に自身の作風を加え完成させた。「目のあたりが、どうしても自分に似てしまいましたね」。反省する一方で雪山さんは、「さらに腕を磨いて、ゆくゆくは内閣総理大臣賞ですかね」と笑顔で語った。
34年に大阪で生まれ、4歳の頃から徳之島で育った雪山さんは56年に上京。喫茶店ボーイから商社マンまで、さまざまな苦難を乗り越えて額縁専門メーカーを創業。現在代表取締役会長を務めている。
次回は、10月7日から東京都美術館で開催される「第57回・現水展」に雪山さんの入選作品「ハブを描いた水墨画」が展示される。