タンカン新品種「平井Red」出願

タンカン新品種「平井Red」出願

14日に農林水産省より出願公表を受けた「平井Red」を出願した平井孝宜さん(右)と学さん(左)

新品種「平井Red」(右)と「垂水1号」(左)。比較すると平井Redの方が、紅が濃い(提供写真)

着色・減酸早く、1月収穫可
奄美かんきつ販売期間拡大期待

 タンカンの新品種「平井Red(レッド)」の出願が農林水産省により公表されたことを受け、奄美市名瀬の平井果樹園園主・平井孝宜さん(37)と父・学さん(70)が同市名瀬の農業総合開発センター大島支場で会見を開いた。新品種は、着色、減酸が早く、1月中の収穫が可能。労力分散による栽培面積拡大と産地の活性化、販売や雇用期間の拡大など、さまざまな効果が期待される。

 学さんは、20年以上前から、タンカンの枝変わり(変異)を行政などと連携し、調査してきた。2013年1月に奄美大島で一般的に栽培されている「垂水1号」の枝変わりを発見。周囲の果実より果皮色の濃い果実5果を確認。学さんはこの時のことを「見た瞬間、鳥肌が立った」と振り返る。

 2人は同種を「平井Red」と名付け、品種登録に向け調査を開始。14年に苗木を作成し、翌15年に植栽した。昨年4月から今年1月にかけ、原木と苗木の品質調査を実施し、今年2月19日に農水省に品種登録を出願。今月14日に出願が公表された。品種登録は約2年後が見込まれている。

 同種は垂水1号と比較すると着色が早く、1月中旬には完全着色。減酸も早く、垂水1号より2~3週間早い収穫が可能になるという。垂水1号と比較すると紅が濃く、果皮の油胞が多いのも特徴となっている。孝宜さんは「12月の津之輝、1月の平井Red、2~3月の垂水1号と、12月から3月まで奄美のかんきつが販売期間が拡大される」と語る。

 また収穫が早まることで、次の開花までの回復期間を稼げるため、隔年結果が是正される可能性も秘める。このほか新品種の登場により、その他かんきつからの改植促進、出荷期間拡大による選果場利用効率の向上などの効果が期待できる。

 JAあまみ大島事業本部果樹部会の大海昌平部会長は「収穫時期が拡大することで選果場、小売、流通などの地域雇用の増加につながる」と語った。

 今後はさらに苗木を育成し、19年以降には島内各地の農家に試験的に配布する方針。5年後を目途に苗木の普及を目指し、実際に果実が店頭に並ぶのは7~8年後になる予定という。