奄美で県立病院学会

奄美で県立病院学会

シンポジストらが意見を交わしたディスカッション

大島病院でも「AST」準備
予防的側面と「治療的側面並列が大切」

 県内の県立5病院関係者らによる第54回「鹿児島県立病院学会」(学会長・石神純也県立大島病院長)が13日、奄美市名瀬の集宴会場であった。「チーム医療 多職種でどんどんつながる結の医療」を学会テーマにICT(感染症対策チーム)に関するシンポジウムで意見を交換したほか、各病院関係者などからの口頭発表などがあった。

 県内の県立5病院(大島、姶良、南薩、北薩、鹿屋医療センター)は同学会を毎年開催。ニーズに対応した高度・良質な医療提供のため、研究成果を発表する。この日は5院の関係者など約200人が出席。36演題が口頭発表された。

 シンポジウムでは、「県立病院ICTにおけるそれぞれの職種が果たすべき役割」をテーマに医師、臨床検査技師、看護師、薬剤師がシンポジストとして各業務の現状・課題などを発表。ICTは病院内で多職種がチームを組み病院全体の感染症対策にあたるもので、5院すべてで取り入れられている

 医師を代表して登壇した大島病院の松下真治泌尿器科部長は。同院のICTの日常業務を紹介。またAST(抗菌薬適正使用チーム)の必要性を言及し、「予防的側面を持つICTと、治療的側面を持つASTが並列することが大切。大島病院でもASTを立ち上げられるように準備している」と話した。

 同院の柳田晶彦薬局長はICT・ASTへの薬剤師の関与について発表。5院すべてで薬剤師がICTに属しているものの、AST活動を実施するのは北薩病院のみ。抗菌薬の適正使用に向けての活動が必要とし、「投与初期段階で薬理学的に評価することが、専門的知識を持った薬剤師の育成につながってくるのではないかと考える」と考察した。

 コメンテーターとして登壇した西順一郎鹿児島大学微生物学分野教授は、昨年8月に同大病院が発表した薬剤耐性菌の院内感染について報告。その原因が▽手指衛生の不徹底▽環境・医療器具の汚染▽清潔・不潔のゾーニングが不十分―などだったとし、注意を呼び掛けた。また西教授は、県立病院のICTについて「感染管理認定看護師の業務は他の病院に比べても充実している。さらなる発展には、医師のサポートや薬剤師や細菌検査システムの充実、病院執行部・事務からの財政的支援が必要」と語った。

 終了後のディスカッションでは医師がICTの院内巡回(ラウンド)に参加できているか、他職種から医師に対して意見を言いづらいことがあるかなどをシンポジストらが発表。このほか、奄美海洋生物研究会の興克樹会長による「地域資源としての奄美の海洋生物」、雲南市立病院(島根県)の大谷順院長による「経営危機からの脱出」の2題の特別講演もあった。