議員と市民が自衛隊配備計画の賛否について討論した「語る会」
奄美大島島内で進められている陸上自衛隊警備部隊配備計画を巡り、奄美市議会の議員有志は24日夜、同市名瀬長浜町の奄美文化センター会議室で「自衛隊問題で市民と語る会」を開いた。議員主体の討論会は初めての試み。参加した市民から、駐屯基地でのミサイル運用部隊配備や誘地を決断した経緯について、「詳細を事前に知らされておらず、民意を反映していない」などの厳しい意見が出た。
防衛省の配備計画によると、奄美市名瀬の大熊地区に奄美駐屯地(仮称)、瀬戸内町節子地区に瀬戸内分屯地(仮称)で施設整備を展開。警備部隊と迎撃ミサイル運用部隊で構成され、合わせて隊員約560人が常駐。来春開隊を予定している。
この日は8議員が出席(推進派5、反対派3)。それに対し参加した市民21人中、ほぼ全員が反対の立場で意見を述べた。
市民からは、「戦争体験者として、軍備が奄美に配置されることが残念」「必要性を住民全員に確認するべき」などと危惧。また配備体制の増強や施設の存在による脅威にも強い懸念を示した。
推進した議員は、▽人口減少の打開策▽常駐人員による経済効果▽国の防衛計画の重要性、脅威から最低限の備え―を挙げ、あらためて意義を強調した。
奄美市長が誘地を表明する以前、「自衛隊を誘致する市議会有志の会」で中心的立場だった伊東隆吉議員は「だれも戦争は望んでいない」と述べ、「(自衛隊は)専守防衛として存在する組織。決して戦争と同義のものではない」と反対意見に異論を唱える場面も。
男性市民の一人は、今回の語る会開催に「開かれた議会として市民に向き合っている。課題解決へ一歩前進した」と評価。その上で「ミサイル配備が当初の説明で示されていなかったのなら、わかった時点で市民に説明するべき」と市側の姿勢を批判した。
市民団体から市側や市議会に説明会を求めるための陳情・請願が計5度提出されたが、いずれも議会で不採択。今回は市民の関心が高い案件として議員有志が開催を決めた。
関係者によると討論を目的に全議員(24人)、自衛隊誘地に賛同した13団体ほか、事業所や各機関に参加を呼び掛けたものの、半数以上の議員は欠席。また賛同意向の団体からの参加は会場では見られなかった。
呼びかけ人世話人を務めた三島照議員は「参加した議員が交わした意見や要望をそれぞれの会派に持ち帰り、今後の活動に生かしてもらえたら」と締めくくった。