開発した金属空気燃料電池を組み込んだ試作品を紹介する川畑さん
【鹿児島】合同会社ナチュラパックスEI(姶良市)の代表・川畑俊彦さん(55)=大和村出身=がこのほど環境に優しい金属空気燃料電池を開発。19―21日に鹿児島市の県民交流センターであった県主催の「水素・再生可能エネルギーフェア2018」では紹介ブースや試作品を出展した。「美しい自然を、次世代を担う子どもたちに残す義務が私たちにはある」と開発に込めた思いを語った。
従来使われている乾電池は便利である半面、水素ガスや強アルカリ性物質を発生させるため、特別なごみ処理が必要になる。加えて発火や液漏れ、子どもの誤飲などのトラブルも年間多数発生している。
川畑さんは8年ほど前、「耐熱性天然樹脂の開発をしていた頃、(金属空気燃料電池の発想を)偶然思いついた」。水と空気、マグネシウムを燃料に、発火・爆発の危険性がなく、排出物が無害で、従来のリチウムイオン電池の約10倍の重量エネルギー密度の電池の開発に成功し、特許も取得した。
従来の乾電池では、電子機器の中に既成の電池を入れるスペースを確保しなければならないが「電子機器の用途に合わせて電池を作る」(川畑さん)ことが可能になった。「エネルギーフェア」では救難信号発振器付きライフジャケット、尿漏れセンサー付きの紙オムツ、土砂崩れセンサーなどの試作品を展示した。今後は自動車メーカーと共同で電気自動車の電池開発などに取り組むという。
「発想の原点にあるのは奄美の豊かな自然、コバルトブルーの海とサンゴ、熱帯魚、そしてヒカゲヘゴやソテツやサトウキビ畑、その中で暮らす島民の愚直なまでにも自然と共存する生き様」と川畑さん。奄美での幼少期の生活体験が、自然と共生し、持続可能な社会を実現したいという原動力になった。母方の祖父・東善高氏はかつて白大島紬を開発し、奄美の戦後復興に貢献。父方の祖父・川畑英助氏は名音小の校長として子どもたちの教育に尽力した。「やっと2人の祖父に追いつけた」と川畑さん。実用化に向けての道のりは様々な困難が予想されるが、「鹿児島からものづくりの文化を発信していきたい」と意気込みを語っていた。
(政純一郎)