奄美博物館 『南島雑話』展開幕

奄美博物館 『南島雑話』展開幕

『南島雑話』展を見学する親子連れ

所蔵の写本初公開
挿絵、パネルで全点

 奄美市教育委員会文化財課は3日、同市名瀬の奄美博物館で企画展「『南島雑話』展―写本の成立背景とその時代―」を開始した。同館所蔵の写本史料から未公開だった史料も初公開され、訪れた市民などが足を止め見学していた。企画展は今月25日まで開催される。

 企画展は同館が所蔵する「奄美研究のバイブル」といわれる『南島雑話』の写本(以下、博物館本)に関する研究成果や、著者の名越=なごや=左源太関係史料を公開して、市民に史料の魅力を発信し周知する目的。博物館本は市の有形文化財に指定されており、史料公開は、2004年の企画展以来になるという。

 『南島雑話』は、江戸時代の奄美大島の人々の衣食住、生業、冠婚葬祭、信仰、習俗などが詳細に観察・記録されている。その名称は総称名で、博物館本は『南島雑話 全』、『南島雑話附録 全』、『大嶹=だいとう=竊覧=せつらん=・大嶹便覧・大嶹漫筆』、『地理纂考=さんこう=・通昭録・南島雑記』、『川辺郡七島記』の5巻で構成される。

 展示内容は、▽『南島雑話』の基礎▽『南島雑話』の著者に関する研究史―名越左源太・伊藤助左衛門―▽奄美博物館所蔵の『南島雑話』写本について―で構成。博物学者の永井亀彦氏の研究で著者は名越左源太と判明したが、河津梨絵氏(当時・鹿児島大学院生)の論文では別の著者として伊藤助左衛門の存在が明らかになったという。

 同館の山下和さんによると、博物館本のうち、『地理纂考・通昭録・南島雑記』と『川辺郡七島記』は今回が初公開。山下さんは「『南島雑話』で描かれている挿絵を写真パネルで全点を順次公開する。また博物館本も週ごとに開いている箇所を変えるので、何度も楽しめる展示になっている」と説明した。

 同市名瀬崎原から両親と一緒に無料公開に訪れた崎原小学校3年の保枝志琉くん(8)は、『南島雑話』を初めて知ったという。「ケンムンの絵が気に入った。『南島雑話』も勉強してみたい」と企画展の感想を話した。

 企画展は25日まで。開館時間は、午前9時~午後5時(入館は同4時半)となっている。