戦争遺跡(近代遺跡)の一つで包蔵地となった久慈にある佐世保海軍軍需部大島支庫跡
県教育委員会は、瀬戸内町の戦争遺跡(近代遺跡)のうち奄美大島側の19件を埋蔵文化財包蔵地に決定した。通知を受けて町教育委員会は町の広報誌に「瀬戸内町の近代遺跡」として掲載。周知の遺跡にすることで開発行為などからの保護が図られ、今後の国指定文化財に向けた一歩となっている。
県教委文化財課によると、包蔵地としての決定を町教委に通知したのは9月5日付で。包蔵地は遺跡や遺物などの文化財が埋蔵されている場所(土地)で、土木工事などの開発行為をする場合、文化財保護法に基づき届け出が義務付けられている。戦争遺跡では文化財保護法の対象にならないことから、町教委は県教委による包蔵地化を目指した。戦争遺跡の包蔵地は、奄美群島では初めて。
町教委では加計呂麻島や与路島などを含めて分布・発掘などの調査を行ったところ、206カ所に及ぶ戦争遺跡を確認した。今回包蔵地とされたのは、皆通崎望楼跡、手安弾薬本庫跡、古志砲台跡、久慈の佐世保海軍軍需部大島支庫跡(水溜)、西古見砲台跡など。町教委社会教育課の鼎丈太郎学芸員=埋蔵文化財担当=は「加計呂麻島、与路島の戦争遺跡も順次包蔵地となるよう県教委に働きかけていきたい」と話す。
県教委による審査などを経て決定したのは奄美大島側のグループ。町教委では発行された町広報誌に包蔵地(近代遺跡)がどこに存在するかわかるよう、地図の上に番号を記載し19件の遺跡名を紹介している。「遺跡を周知するとともに、工事などを行う場合は必ず文化財担当者に申請が必要なことを町民のみなさんに伝えている。これまで法の網がかかっておらず、こちらの把握なしに破壊されることもあった。戦争遺跡が周知の遺跡となったことで保護、あるいは事前の調査による記録保存が可能となる」(鼎学芸員)。町のホームページにも掲載する方針だ。
こうした近代遺跡の調査にあたり町教委は昨年、県内外の専門家による調査委員会を発足。専門家の指導などを受けながら巡検や発掘調査などを進めている。2020年度には報告書を作成する計画で、調査の成果などをまとめ国指定文化財を目指す。