劇終盤、子どもたちに平和の尊さを語りかけた光校長
宇検村の久志小中学校(光一博校長、全校児童12人)は4日、同校体育館で2018年度文化祭を開いた。今回のテーマは「とどけ!ぼくらの思い~平和へのメッセージ~」。ステージ発表では「対馬丸事件」をもとにした劇もあり、児童らは訪れた観客に事件の悲惨さ、平和の尊さを訴えた。
久志っ子劇場「平和への道しるべ」と題された劇は、対馬丸事件の史実をもとに創作を織り交ぜたもの。光校長が地元住民からの聞き取り、沖縄県那覇市の対馬丸記念館で学んだことなどから脚本・演出を手掛けた。児童12人のほか、教職員、光校長自身も出演した。
学童疎開船「対馬丸」は太平洋戦争中の1944年8月に十島村悪石島近海で米軍の潜水艦に撃沈された。100人を超える子どもたちの遺体が、同村宇検集落の船越=ふのし=海岸を中心とした近隣集落に漂着。21人が生存した状態で流れ着き、村民が救助にあたった。
劇は、子どもたちが宇検集落にある「対馬丸慰霊之碑」の前で、涙する遺族の女性を見つけ、事件について疑問に思うところから始まる。その後、学童疎開船に乗り組んだ子どもたちが米兵の同情を誘う目的で甲板に立たされるシーンや、撃沈された対馬丸から飛び降りる場面など当時の様子を再現し熱演した。
物語の終盤、光校長は児童らに「これから先、世界中の人々と心を通わせ、素晴らしい未来を作ってほしい」と平和へのメッセージを伝達。児童らは「自分たちのひいじいちゃん、ひいばあちゃんたちが対馬丸のことで人助けをしたことを誇りに思う。平和の心の連帯をたくさん作っていきます」と宣言した。
30分以上にわたる劇で熱演を見せた6年生の福山悠くん(11)は、「対馬丸の慰霊碑ができてから、ビデオや校長先生の話で様々なことを学んできた。今回演じてみて、当時の子どもたちが感じていた恐怖心が理解できた」。光校長は「石碑建立を機に、演劇にして子どもたちに演じさせる必要性は感じていた。子どもたちは想像以上に演じてくれた」と話した。
文化祭ではこのほかにも、ソーラン節や合奏など多彩な演目を披露。保護者や教員らによる発表もあり、盛り上がった。