「奄美・琉球」観光・交流連携体制構築事業

「奄美・琉球」観光・交流連携体制構築事業

世界自然遺産候補地4島のガイドなどが参加しガイドの質の向上を議論した

知識習得やガイド交流を
4島の実情語り、資質向上など議論

 鹿児島県と沖縄県などは16日、奄美市名瀬の鹿児島銀行大島支店2階でエコツアーガイド意見交換会を開いた。世界自然遺産の候補地の4島のエコツアーガイドなどが参加し、交流を図りガイドの質向上について議論し意見を発表。質の向上について幅広い知識の獲得や、ガイド同士の交流などの意見が出された。今後屋久島や、沖縄県での研修があり、来年2月に研修成果の報告会を予定している。

 2013年に奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島が世界自然遺産の候補地に選定されたことから、鹿児島沖縄の両県は15年度から「奄美・琉球」観光・交流連携体制構築事業を開始。同事業でこれまでにパンフレットやポスター、PR動画の作成など行い、観光プロモーションを展開してきた。

 地域から観光客の受け入れ態勢を不安視する声があったことから、今年度は候補地である4島のガイドが交流する研修を企画。今月12日から徳之島を皮切りに、エコツアー体験など実施。この日の意見交換会に、エコツアーガイド、行政など約20人が参加した。

 参加したガイドから、4島のエコツアーガイドの実情や各自が抱える課題などが報告された。西表島の余語晶子さんは、住民アンケートで世界自然遺産登録に反対意見が多い状況を説明。「西表が直面する課題は観光管理。体験などのアクティビティは人気あるが、自然の利用状況などの調査は端緒についたばかり」と話した。

 沖縄島北部の大宜味村の松川隆行さんは、「村の人口は約3700人。ガイドが活躍する場はあまりない。ガイド業だけでは立ち行かない」とした。伊仙町から参加した常加奈子さんは、人口減少や無関心層への啓発などを課題に挙げた。

 また環境省奄美野生生物保護センターの千葉康人上席自然保護官による講話も実施。千葉さんは「みなさんの活動される場所は、特別な環境にある。今回は登録延期を勧告されたが、それを真摯に受け止め地域の人と協力して登録実現を目指したい」と語った。

 ワークショップでは、参加者は3班に分かれ意見交換。テーマ「ガイドの質をどう高めるか」について、各班で活発な意見が続出。班ごとに発表者を決めて、まとめられた意見の発表が行われた。

 質の向上に、幅広い知識習得やガイド同士の交流、適応力を高める取り組みなどを指摘する意見が多く出された。交流を図る場所づくりや、環境教育の実施を課題とする意見も。

 西表島から参加した安立和也さん(30)は、ガイドとして活動して3年目になるという。「西表ではメリットが見えないことから、世界自然遺産に反対の立場の人が約半数いる。今回研修に参加して、アクティビティなど体験型観光が優先する西表のエコツアーガイドは認定制度もなく、遅れていると感じた。成果を持ち帰り、地域で生かして行きたい」と話した。