企業の高所施設で訓練

訓練でセメントサイロ上部の避難所を目指し駆け上る参加者(写真は奄美市笠利町手花部)

津波想定、従業員や住民参加
笠利町手花部

 セメント企業最大手の太平洋セメント㈱は22日、奄美市笠利町手花部の同社奄美サービスステーション(SS)で、従業員や関連事業所、近隣住民を対象に津波を想定した避難訓練を開いた。離島での訓練は初めて。参加者は訓練放送を合図に、SS管理棟の上部に設けられた避難所を目指して高台避難を行った。

 今後30年以内に70~80%の確率で発生が心配される、「南海トラフ巨大地震」に備えた防災対策の一環。同社協力会社の南栄建設ほか、関係事業所の従業員や前肥田集落(野田睦義区長、25世帯約50人)の住民など約30人が参加した。

 午前10時の津波発生の放送を受け、参加者はSS内にある第一避難所の管理棟上部(海抜5・1㍍)に1列になって駆け上り。その後、10㍍の津波接近中との連絡から、さらに第二避難所のセメントサイロ(同15・4㍍)上部へ避難した。

 訓練終了後、大島地区消防組合笠利消防分所の三井淳行統括隊長が「津波が来る前にいち早く高台避難することが大切。ルートに沿って迅速な行動が図られていた」と総括。また隊員立会いの下、消火訓練も行った。

 同社は今回の訓練を前に、管理棟内の床面に第一、二避難所へのルートを示すガイド線を塗布。また10人分の食料や水、ライフジャケットなどを常備した格納ボックスも新たに設置した。

 同社九州支店セメント営業部の西岡一彦課長は「訓練をきっかけに、住民を巻き込んだ防災意識の醸成、緊急時の対処向上につなげたい」と語り、今後も年1回程度の訓練を行うとしている。

 野田区長は住民の高齢化に触れ、「近くにある高所施設を利用できるのは心強い。緊急時は声掛けなどして対応に努めたい」と話した。