復帰65周年記念奄美人大会シンポ

講師やシンポジストら(左から大倉氏、大江氏、奥田氏、谷山氏、叶氏、麓氏、西平氏)が一堂に会して全体討論を実施

誇りと自信持った島人育成を
将来像語り合う 自立的発展へ出身者ら提言

 奄美群島日本復帰65周年記念民間団体実行委員会(大津幸夫実行委員長)は24日、奄美市名瀬の県立奄美図書館研修室で「奄美群島日本復帰65周年記念第2回全国奄美人大会シンポジウム」を行った。参加者は出身者の提言、基調講演と全体討論などで復帰70周年に向け奄美の将来像を語り合った。出身者などからは、「歴史を正しく理解する」「アイデンティティを確立し、誇りと自信を持った島人の育成」などの意見が出された。

 オープニングで「日本復帰の歌」「朝はあけたり」を斉唱。開会行事で大津委員長は「次の70周年へ、奄美の将来像に新しい統一見解を持たねばならない。シンポジウムで、いろいろな意見を出していただきたい」とあいさつした。

 後援団体から代表として、奄美群島広域事務組合管理者・朝山毅奄美市長(代読)と同市議会の師玉敏代議長が登壇してあいさつ。基調講演を瀬戸内町加計呂麻島出身の日本経済大学大学院元教授である叶芳和氏が「奄美群島の新しい目標」の演題で行った。

 講演冒頭に叶氏は、「復帰運動を記念するシンポジウムだが、未来志向で語り合うのが大事でないか」と強調。「奄美のこれからに、シビック・プライド(誇りの持てるまちづくりをすること)の地域振興戦略が目標になるだろう」と持論を展開した。

 また奄美の農業や産業の可能性に言及して、サトウキビ農業や島豚を例示。「サトウキビは農業のイロハをしっかりすれば、単収が上がり今より所得がアップするだろう。食文化として『島豚』を復活させ、付加価値を生むような取り組みをしてもらいたい」とアドバイスした。

 講演に続き奄美人代表者4者が、登壇して提言。中部奄美会の谷山政弘会長(和泊町出身)は、元気に100歳を迎える運動習慣と、それに向けた環境づくりを発表した。

 沖縄奄美連合会の奥田末吉会長(龍郷町出身)は、郷土教育の必要性と、奄美のことが分かる冊子の作成を提言。(公財)奄美奨学会の大江修造代表理事(龍郷町出身)は、サトウキビ農業を災害に強いものにして、2020年の小学校のプログラミング教育必修化に向けた対応などを発表。神奈川県横須賀市在住の大倉忠夫弁護士(喜界島出身)は、密航と抵抗権を説明して「軍政府の圧迫にひるまず、困難を乗り越えて活路を開こうとした勇気と努力こそ語り継ぎ学ぶべきことだ」と発表した。

 あまみエフエムの麓憲吾代表も、自身の経験を交え「島の未来を担う子どもたちにアイデンティティを持ってもらい、島へ戻ってきてもらう必要がある」と話した。

 大津委員長が10月にあった奄美自立発展シンポジウムのシンポジストのレジュメ紹介と、市議会へ提出する陳情書や、復帰65周年を記念する教育行政に関する大島教育事務所や市教委への要望書を説明。復帰運動を伝承する会の西平功会長がコーディネーターとなり、講師やシンポジストなどを交えて全体討論を実施した。

 叶氏は、「奄美には良いものが多いが、それを生かしきれていない。今まで情報や研究の価値を認めて来なかったのでないか」と課題を指摘。復帰運動がアイデンティティになるかについて大江氏は、「歴史を正しく理解すれば、可能だろう」と発言。叶氏は「アイデンティティは世界の中で位置付けて、世界から見てどうかを考えないと発展しないだろう」と語った。