「子宝祈願」のご神体消える

「子宝祈願」のご神体が盗まれた新田神社(円内は祠)=4日、伊仙町喜念

住民呼び掛け 「1日も早く戻して」
伊仙町喜念「新田神社」

 【徳之島】「祠(ほこら)で祈願してこそ、ご利益が」――。伊仙町喜念集落の信仰の森にある「新田(あらた)神社」境内の祠のシンボルのご神体が、何者かによって持ち去られた。合計特殊出生率日本一の町における「子宝祈願」の聖地。新たな観光スポットとしても静かに認知され始めていた矢先だった。

 新田神社(1978年2月・町名勝史跡指定)は、喜念集落の山手側の亜熱帯の森に位置。町が立てたという看板には「喜念集落の霊験あらたかな聖地の神社。別称で新田権現。古くは喜念御岳(うたき) と言われ、鎮守の神として森全体が信仰の対象。祠には神道の神が祀(まつ)られ、御神木には安産を願うため海砂が貢納される」(要旨)とも。

 真砂が敷かれた祠には、一般的な「子宝祈願」地にも共通した男性のシンボルを模した石彫(高さ約20㌢・年代不明)がご神体として鎮座していた。

 喜念集落の森きみ子区長(68)によると、先月18日に参拝した時点では異常はなかった。29日に訪れた別の住民男性が、ご神体と線香立てが無くなっているのを確認。連絡を受けた森区長は窃盗事件とみて徳之島署に通報した。

 同町は合計特殊出生率が全国平均(1・44人)の2倍にも及ぶ全国市区町村トップの2・81人。子宝日本一と泉重千代さん(享年120歳)ら長寿世界一を2人生んだ奇跡の「長寿子宝のまち(しま)」。世界自然遺産候補の島の一つとしての相乗効果もあってか、新田神社は「子宝祈願」の聖地と静かに注目を集めつつある矢先だった。

 森区長は「徳之島空港の愛称も『子宝空港』。新田神社は集落住民で定期的に清掃作業も行っている」。線香立てとセットで持ち去られたことには「この祠で祈願しないと(子宝の)ご利益はないと思う。1日も早く戻してほしい」と呼び掛けている。