長崎大環境科学部、深見准教授が「奄美の世界自然遺産登録と持続可能な観光への展望」と題し講話した
経済地理学会の合同例会が8日、奄美市名瀬の奄美会館会議室であった。同学会西南支部・関西支部の会員ほか島内関係者ら約30人が出席。奄美群島の観光と地域づくりをテーマに、識者による講演、パネルディスカッションなどを通し、登録を目指している奄美の世界自然遺産、観光地としての奄美の展望などを考えた。
県大島支庁総務企画部長の田中完さんが最初に登壇。「奄美群島の魅力について」を演題に、奄美の自然、「ショチョガマ」など伝統文化を紹介した。
群島全体的な人口減少が進む一方で、移住者が増えている諸地域の状況にも触れ、田中さんは「島の人との新しいコミュニティーができ、活気あるシマが形成されたり、琉球弧での交流が活発になっているのでは」などと奄美の将来像を語った。
続いて、深見聡長崎大学環境学部准教授が「奄美の世界遺産登録と持続可能な観光への展望」と題し講話した。
近年の観光動向に触れ、LCCの路線開設などで来島者が増加し、「インバウンド効果が生じつつある」とも分析。持続可能な観光について、来訪者(ゲスト)と迎え入れる側(ホスト)の相互理解の重要性を挙げた。
世界自然遺産登録地の取り組みとして、屋久島の入山協力金(1日=千円)などを例に、自然遺産登録と観光の両立を目指すうえで「可能な限り先手の政策を」と強調。また、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」でのマナー違反、他の地でのごみ投棄など観光公害の発生を受け、観光教育の必要性を訴えた。
深見氏は、持続可能な観光を求めるなかで、良き観光者、よき受け入れ者の育成が不可欠とし、「『地域が主役』の観光への理解、定着が重要」などとまとめた。5人が登壇し、パネルディスカッションも行われた。