一村が見つめた奄美語る

一村が見たであろう世界観を語り合う東さん(右)と宮崎館長(手前)

映像作家・東さんと宮崎館長が対談
一村美術館

 県奄美パーク・田中一村記念美術館は9日、気鋭の映像作家・東加奈子さんと同館・宮崎緑館長が対談する「田中一村生誕110周年特別対談・講演会」を同館特別展示室で行った。二人は来場者を前に、フランス・パリのジャポニズム展出展の映像を通して、一村が見つめた奄美を語り合った。

 映像は、7月14日~8月21日にフランスのパリ・ロスチャイルド館で開かれた「ジャポニズム展~深みへ~」に、一村の世界を表す映像インスタレーションとして出展。一村が見た世界観を、来場者に伝える映像として絵と展示された。

 制作は、東さんと、キュレーター・黒沢聖覇さん、サウンドアーティスト・梅沢英樹さんのアートユニットが作成。茶の湯の言葉で客が自分一人であることを表す「独客=どっきゃく=」をタイトルに、孤独な異邦人・一村と奄美の関係性を映像化した。

 会では、来場者とともにまずは映像を鑑賞。登場する絵のモチーフとなった植物や見慣れた風景にも関わらず宮崎館長は「芸術的な島に住んでいるという感覚に捉われた」と感想を述べた。

 東さんは、一村の描く絵を「灰色」と捉え、映像制作の意図を細かに説明。所々、青写真映像を挿入したことについては「写真は光で印画紙に焼き付けるが、一村の絵も自分の光を通して奄美を焼き付けたはず」と、独自の解釈を展開した。

 また、東さんは生涯をかけて一村を支えた姉・貴美子の死を〝転機〟と捉え、「そこから絵が、より深く中に入った。小さな小宇宙が成立した」と解説。一村を感覚的につかむ上では、重要なキーワードに据えていたことなどを明かした。

 最後、宮崎館長は「この斬新な映像に何を思うか、一村に聞いてみたい。新たな創作意欲につながるのでは」と評価。この後は来場者とも意見を交わし、会を終えた。